15日公示、27日投開票の衆院選を巡り、自民党県連内に動揺が広がっている。比例東北ブロック単独で立候補を予定した前職上杉謙太郎氏=2期=が立候補を辞退し、党本部に出した5人の公認申請は事実上2件が通らなかった。県連は結束を訴え、選挙への影響を最小限に抑えたい考えだ。
衆院選公示を5日後に控えた10日、小泉進次郎選挙対策委員長は上杉氏と話し込んでいた。内容は、調整が難航する2次公認状況について。上杉氏は「けじめ」を理由に出馬辞退を申し出たとされる。
「どうしてこんなに変わるんだ」。10日夜、事態の急転を知らされた県連幹部は脱力し、悔しがった。
わずか2週間で県連を揺らす事案が4件続いた。9日には3区で前職菅家一郎氏=4期=が党から非公認を通知され、急きょ無所属での立候補を決断。2区、4区では前職が出馬見送りを相次いで表明した。残る1区も、前職の比例代表への重複立候補は認められない公算が大きい。
菅家氏は衆院選で県連の公認申請が却下された初の事例で、上杉氏は事実上2人目。上杉氏に関しては昨春「比例の名簿上位」に優遇を約束する覚書まで党と締結したが、実らなかった。
極めて異例の結果に、矢吹貢一県連幹事長は「『この人物なら大丈夫』と自信と誇りを持って出した公認申請であり、(却下は)誠に残念。『政治とカネ』の問題はそれほど重いということ」と言及。その上で「私たちは党人であり、決定に不満があっても結果には従う」と語った。
党本部に恨み節
一方、衝撃が続いた影響は計り知れない。陣営は「経験したことのない選挙」と口をそろえ、別の県連幹部は「党本部は約束を守らず、党員や地元支持者の思いまで裏切った」と恨み節。東京電力福島第1原発事故からの復興を念頭に「議席が減れば、福島の意見が国に届かなくなる」との懸念も強まっている。
矢吹幹事長は報道陣の取材に「選挙戦への影響がゼロとは思わないが、『何とかしなければいけない』との意識も芽生えつつある」と強調。かねて目標に掲げてきた「5議席維持」に向け、党内に改めて結束を呼びかける考えを示した。
上杉氏、政治活動は継続
衆院選比例東北ブロックからの立候補を辞退した自民党前職の上杉謙太郎氏(49)=比例東北、2期=は11日、福島市内で報道陣の取材に応じ「引退は考えていない。一から地元でやり直していく」と述べ、次期衆院選への出馬などを念頭に政治活動を継続する考えを示した。
上杉氏は10日夜に小泉進次郎選対本部長に不出馬の意思を伝えたことを明らかにした上で、理由については「国民の皆様にしっかりけじめを見せるということで決断した」と話し、幹事長注意を受けた派閥裏金事件への責任から判断したと強調した。
今後は福島3区に出馬する候補者の支援に全力を挙げる方針だ。