東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興は、本県や浜通りの地方問題ではない。各党は、現在も続く被害の多くが国策であった原子力政策の安全面の不十分さに起因していることを踏まえ、国が解決すべき課題であると改めて肝に銘じる必要がある。
津波などの複合災害の被害を受けた地区では、公共施設の再整備や企業誘致などが行われてきた。大規模な事業がほぼ終了した地区がある一方、原発事故で避難が長く続いた大熊町や双葉町などの本格的な環境整備はこれからだ。近年は地区の再生の進度を問わず、地元事業者や進出企業での人手不足が顕在化している。
各党は、公約で中長期的な支援や福島国際研究教育機構(エフレイ)と連動した産業再生などを掲げるが、人口回復への道筋は見えない。住居の確保や広域交通の充実など市町村単独の努力では難しい分野もある。各党は、復興事業の成果を帰還者や移住者の増加につなげる具体策を訴えてほしい。
原発事故の被災地のうち、浪江や富岡などの7市町村には、今も立ち入りができない帰還困難区域が残されている。帰還する意向のある人の住宅やその周辺を「特定帰還居住区域」とし、除染を経て避難指示解除を目指す取り組みが始まったが、帰還が実現するのは早くても数年後となっている。
震災から13年半が過ぎ、避難先で帰還を待つ人の高齢化が進む。各党の公約では、帰還困難区域の避難指示解除について「全力で」「丁寧に」の文言が並ぶのみだ。公約が精神論にとどまる背景に「書いておけば良い」という対応の風化はないか。各党の幹部や候補者は遊説で、早期の解除をどのように実現するか示すべきだ。
除染で出た土壌などを中間貯蔵施設で保管する期間は2045年までとなっている。県外処分には処分地をはじめとした理解の醸成が欠かせないが、除去土壌の再生利用の県外実証事業ですら住民の反対で進んでいない現状がある。
県外処分にどう取り組むのか。日本維新の会が搬出完了の目標時期を見直す必要性を指摘しているが、他党は具体的な打開策を示していない。第1原発の廃炉の最難関とされる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しは、先行きが読めない状況が続く。技術開発やデブリの保管先の確保など、完遂には困難な課題が山積している。
県外処分と廃炉は国と県民との約束であり、政権が代わっても責務は継続する。各党は、官僚や東電に任せきりにせず、議論を深める契機としなければならない。