【新まち食堂物語】芳登里・会津若松市 親子3代、看板受け継ぐ

10/20 11:30

  • 動画付き
母規子さんから引き継いだ店を切り盛りする拓弘さん(右)と優理亜さん夫妻(石井裕貴撮影)
看板メニューの県産のブランド豚「麓山高原豚」を使ったしょうが焼き定食とロースとんかつ定食

 会津若松市門田町の住宅地にある「芳登里(ほとり)」は、この地で50年以上にわたり地元客の胃袋を満たしてきた。店を切り盛りするのは3代目社長の平田拓弘さん(32)と女将(おかみ)の母規子さん(61)、妻の優理亜さん(29)。拓弘さんは「来て良かったと思ってもらえたり、仕出し弁当で喜んでもらえることがうれしい」とはにかむ。

 創業は1973年。拓弘さんの祖父母の鈴木鶴吉さんとトミ子さんが、知人から「お店をやらないか」と声をかけられたのがきっかけだった。会社員だった鶴吉さんとトミ子さんは調理経験が全くなかったため、料理人を雇い、ラーメンとカツ丼を中心とした「芳登里食堂」を開店した。

 開店から約10年後、地域住民から「大きな集まりができる会場が欲しい」と要望を受け、2階に宴会場を増築。この頃に昼の営業に加えて、夜の宴会を中心とした割烹(かっぽう)に業態を変えていった。

 素材を生かして

 約15年前、高齢になった両親のため、東京都で生活していた規子さんが会津に通い、店を手伝うようになった。5年ほど会津と都内を行き来する生活を過ごしたが、夫武司さんからの「お母さんを手伝ってあげたら」という後押しもあり、約10年前に会津若松市に戻って店を継いだ。その後、規子さんは飲食店での勤務経験があった拓弘さんに「手伝ってほしい」と声をかけ、拓弘さんも料理人として店に加わった。

 拓弘さんはピザ店やスペイン料理店に勤めていたが、和食店やラーメン店での経験はなく「とても不安だった」と当時を振り返る。それでも「ばぁちゃんが四十数年やってきたお店をなくすのはもったいない」と板前に付いて魚のさばき方など和食の基本を身に付けた。数年たつと、調理場をほぼ一人で回せるほどに成長した。

 昼時になると、平日は地域住民や会社員、休日は法要や七五三など大人数の食事会などでにぎわう。メニューの特徴は食材の仕入れへのこだわりと、素材を生かした調理法だ。看板メニューは県産のブランド豚「麓山高原豚」を使ったしょうが焼き定食と、とんかつ定食。拓弘さんは「脂身の甘みを生かし、肉が硬くならないように調理している」とこだわりを語る。創業当時のレシピを受け継いだラーメン、仙台から仕入れた魚を使った焼き魚定食も人気がある。

 地元盛り上げる

 新型コロナウイルス禍以降は市内のイベントにも出店し、おいしい料理を提供するだけでなく市内の盛り上げにも一役買っている。

 拓弘さんは今春、規子さんから正式に店を引き継いだ。規子さんは「どういう形でも良いので店を継承して、芳登里という店のともしびを守ってほしい」と思いを託す。

 「今は仕出し弁当の注文も多いが、直接お店に来てもらえるようにしたい。夜の営業も始めたい」と意気込む拓弘さん。半世紀以上にわたって親から子へ受け継がれてきたお店を今後もこの地で守り続ける。(八巻雪乃)

お店データ

■住所 会津若松市門田町中野字大道東12の1

■電話 0242・26・0426

■営業時間 午前11時30分~午後2時(同1時30分ラストオーダー) 夜は宴会の予約のみ

■定休日 水曜日

■主なメニュー
▽麓山高原豚しょうが焼き定食=1200円
▽麓山高原豚ロースとんかつ定食=1450円
▽ラーメン=750円
▽ソース煮込みカツ丼=1250円
▽焼き魚定食=900円から

 漢字は住職が考案

 店内の入り口近くには店名にまつわる書が飾られている。店が川のほとりにあることから名付けられた。近くの寺の住職が漢字を考え「芳しく登る里」という言葉から「芳登里」とした。書は創業した1973年にこの住職から贈られたものだという。 

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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