石破茂自民党総裁が再び首相に選出され、第2次石破内閣が発足した。首相が「新しい内閣の信任を国民に問う」とした先の衆院選で、与党は過半数割れに追い込まれた。まずは国民から不信任に等しい審判を下された現実をしっかり受け止め、国内外に山積する課題の解決に注力すべきだ。
首相はきのう、野党第1党の立憲民主党、衆院選で躍進した国民民主党の各代表と個別に会談し、政治改革への協議を含む国会運営への協力を求めた。自民の派閥裏金事件などの「政治とカネ」の問題の根絶なくして、政治の信頼回復は成し得ない。与野党の垣根を越え、早期に政治資金規正法の再改正などを目指してほしい。
自民、公明両党は厳しい国会運営を迫られるなか、政策ごとに野党と連携する「部分連合」の構築を目指す構えだ。早速、自公と国民民主の3党で補正予算案などの協議に入っている。少数与党という現実を踏まえ、野党と丁寧に政策を議論し、合意形成を図っていくのは当然のことだろう。
しかし国民民主は議席数を伸ばしたとはいえ、野党第1党は立民だ。先の選挙での有権者の民意を踏まえれば、与党は立民とも協議すべきであり、国民民主との連携だけでは単なる「数合わせ」との批判も避けられまい。
政策決定の過程が不透明で、財源などの裏付けがないまま、予算案や法案を成立させるようでは、国民の負託に応えたとは言えないだろう。野党の主張をそのまま受け入れることで、責任の所在を曖昧にしてもならない。
今後、国民民主が選挙公約に掲げた「年収の壁」の引き上げ、ガソリン税の税率見直しなどが協議される見通しだ。それぞれの政策を主張するだけで何も決められず、政治の停滞を招くような事態は許されない。与野党が国会で熟議し、責任を持って最適解を導き出すことが重要だ。
きのうの首相指名選挙では、石破氏と立民の野田佳彦代表による決選投票で、国民民主、日本維新の会、参政党などは各党代表に投票した。棄権や退席ではなく、石破氏の得票が野田氏を上回ることを踏まえた上でルールを無視して無効票を投じたことにより、結果的に与党を利する形となった。
与野党の勢力が伯仲し、国会に緊張感が生まれることは歓迎したい。しかし政党間の駆け引きや自らの存在感を高めることを優先した行動は、国民の理解を得られるものではないだろう。少数与党の国会では、野党の責任も極めて重いことを自覚すべきだ。