報道を含むメディアへの不信を招いた罪は極めて重い。
フジ・メディア・ホールディングス(HD)が、元タレント中居正広さんと女性とのトラブルを巡り週刊誌で社員の関与が報じられたフジテレビの港浩一社長と、嘉納周治会長の辞任を発表した。
問題発覚以降、スポンサー企業によるCM差し替えが相次ぎ、影響が長期化すれば、数百億円規模の減収となるとの見方がある。この問題を巡っては、トラブルがあったとされる女性への対応が十分ではなかったことや、この女性への配慮を理由に積極的な調査を避けていたことが浮き彫りとなっている。経営陣が退陣したことをもって、スポンサー企業がCMを再開するかは不透明だ。
フジテレビが信頼を取り戻すには、コンプライアンスに基づいた企業統治を構築する以外にない。第三者委員会の調査と並行する形で、今回判明した人権をないがしろにするような企業風土を刷新していくことが不可欠だ。
フジテレビは多くの系列局を抱える在京キー局の一角だ。その会社の十分な真相究明がないまま経営陣の辞任で幕引きを図るかのような姿勢は、マスメディア全体のものと受け取られかねない。
キー局をはじめとする報道各社は、自社内でも人権をないがしろにするような企業風土がないか点検が必要だ。公正で正確な情報を届ける役目を果たすことで、視聴者や読者の信頼を高めていくことも重要となる。
港氏が17日に行った会見が参加者を限定し、動画撮影を認めなかったことで批判を受けたことから、おとといの会見は参加者を限定せず撮影も認めた。時間を限ることなく質問を受け付けたのは、報道機関として評価できる。
一方、同じ報道関係者として眉をひそめざるを得なかったのは出席した一部の記者たちの態度だ。重複した質問や明らかに的外れな質問が多く、挑発的で乱暴な物言いも目立った。今回の会見は一部始終が放送され、報道メディアの取材の様子を示すことで、その重要性を証明する機会となる可能性もあっただけに残念だ。
交流サイト(SNS)の普及により、誰でも情報が発信できるようになっている中で、報道を仕事とする各社や記者の力量こそが問われているのを忘れてはならない。
CM差し替えは系列各局にも広がっており、福島テレビなどの経営への影響も長期化する公算が大きい。フジ・メディアHDは、系列局や関係企業への影響を最小限に抑えることにも注力すべきだ。