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【1月30日付社説】日銀の追加利上げ/物価と賃金の好循環創出を

2025/01/30 08:00

 日銀による昨年7月以来の利上げで、日本は長らく経験していない金利水準に入った。日銀は影響を注視しながら、金利の正常化を着実に進めることが重要だ。

 政策金利が0・25%程度から0・5%程度に引き上げられた。17年ぶりの金利水準となるが、欧米に比べ日本の水準はまだ低く、緩和的な環境が続いている。

 日銀が利上げを判断した要因の一つが、円安の影響による輸入物価の上昇だ。日銀は今回、生鮮食品を除く消費者物価指数の上昇率の見通しを本年度2・7%、2025年度2・4%に上方修正した。物価安定目標の2%を継続して上回る状況が想定される。

 物価は昨年秋ごろから急上昇しており、利上げの遅れを指摘する意見もある。一方、日銀はトランプ氏の米大統領就任に伴う金融市場の動向など、判断材料がそろうまで利上げを先送りしてきた。

 物価上昇率が2%を超える中、緩和的な環境が続くとさらに物価が高騰するリスクがある。市場の動向などを見極めつつ、これ以上リスクが高まらないよう利上げに踏み切った判断は妥当だ。

 利上げで日米の金利差が縮まり過度な円安が是正されれば、輸入品の価格低下で家計の負担軽減が見込める。地方の中小事業者などにとっては、燃料や資材にかかるコスト削減による業績改善や賃上げにつながるメリットがある。

 利上げにはデメリットも伴う。住宅ローン金利の上昇で返済負担が増し、消費が停滞すると懸念されている。中小事業者の資金繰りが厳しくなる恐れもある。

 事業者の収益が上がり、賃上げで家計の負担が軽くなる好循環をつくることが大切だ。日銀は、利上げの効果が地方に波及しているか目配りし、金融緩和の度合いを調整する必要がある。

 日銀は経済や物価が想定通りなら、景気を熱しも冷ましもしない水準の「中立金利」まで政策金利を引き上げる方針だ。市場には、日銀が1%程度の水準を目指し、今年中にもう一段の利上げに踏み切るとの見方がある。0・75%程度となれば30年ぶりだ。

 利上げへの大きな不安要素となるのはトランプ大統領の政策だ。関税強化で米国内のインフレが再燃すれば、米国の利下げが遅れる可能性がある。過度な円安が続くことで日銀の利上げのペースが速まれば、負担増に耐えられない中小事業者や家庭が出かねない。

 物価の安定による日本経済の再生に向け、次の利上げは大事な判断となる。日銀には、慎重なかじ取りが求められる。

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