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【1月31日付社説】基礎的財政収支/借金依存の体質改善を急げ

2025/01/31 08:10

 政府は2025年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、4兆5000億円の赤字となる見通しを示した。昨年7月の時点で8000億円程度の黒字と試算していたが、昨年末に成立した補正予算に伴う経済対策が影響し、赤字に転じた。

 プライマリーバランスは、社会保障や公共事業などの政策経費を税収でどれだけ賄えているかを示す指標で、赤字だと借金に頼っている状態を意味する。政府は18年に黒字化目標を20年度から25年度に先送りし、ようやく黒字化のめどが立っていた中、再び目標達成が困難な状況になった。

 国の借金は昨年、初めて1300兆円を超え、主要先進国の中で最悪の水準にある。今回の黒字化先送りは、国の財政運営の信頼性を大きく損なうものであり、政府には猛省を求めたい。

 財政規律を緩めているのは、常態化している年度途中での大型の補正予算編成や、ばらまき型の施策だ。災害対応など緊急性の高い補正予算は理解できるが、ここ数年はそうした要件を満たさない歳出が散見される。

 石破茂首相は昨年10月、衆院選の公示日に突如、前年度を上回る大型の補正予算編成を表明した。派閥裏金事件で支持率が低迷する中、物価高対応などを鮮明に打ち出し、選挙戦を有利に運ぼうとした思惑が指摘された。

 通常国会に提出された25年度予算案は一般会計総額が過去最大を更新した。与野党は今夏の参院選をにらみ、教育の無償化、所得税の非課税枠(年収の壁)の引き上げなど、大規模な財政出動が伴う施策を議論の俎上(そじょう)に載せている。

 高齢化で社会保障費が膨らみ続けている。日銀は政策金利の引き上げを進めており、国債の利払い費がかさむことが想定される。現在は好調な企業業績で法人税や所得税などの税収が大きく伸びているものの、先行きは不透明だ。与野党は、将来世代につけを負わせるような、選挙向けのばらまき型の施策は慎むべきだ。

 政府は賃上げなどで経済成長が実現すれば、26年度は2兆円超の黒字になると想定した。政府試算では、国内総生産(GDP)の成長率が20年代後半に実質1%台半ばで推移すると仮定した場合、黒字を維持できるが、0%台半ばの低成長が続くと、33年度から再び赤字になる見込みだ。

 巨額の借金を減らしていくには経済成長が欠かせない。そのためにも徹底した歳出改革で、成長が期待される分野に集中投資できる環境を整えることが重要になる。

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