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【2月1日付社説】災害備蓄/要配慮者の視点で充実図れ

2025/02/01 08:10

 被災者が必要とする物資を速やかに提供するため、平時から入念に備える必要がある。

 内閣府は、能登半島地震で災害用物資が不足したことを受け、昨年11月現在の全国の備蓄状況を初めてまとめた。内閣府は調査した50品目のうち、主食は一定量が確保されており、簡易ベッドについては増やす必要があるとした。

 50品目の中でも被災者を守るのに不可欠な基本品目として、内閣府は食料や乳児用ミルク、生理用品、大人用おむつなどを例示している。県内59市町村の中には、生理用品を確保していないなど備蓄が不十分な自治体があった。

 最低限の備えさえ不十分なのは、自治体として被災者を守る責務を軽視しているに等しい。県内市町村は、備蓄が全くない、あるいは必要量に達していない品目を早急に確保すべきだ。

 内閣府は、地域ごとに人口や想定される災害が異なるとし、50品目の必要量を示していない。ただ、基本品目は地域の特性と関係なく一定の水準を確保すべきものだ。国には、必要量の目安を示し、自治体に基本品目の確保を促すことが求められる。

 備蓄は主食や水があれば事足りるものではない。例えば、食物アレルギーがあり備蓄品を食べられない人がいる。能登の被災地では生理用品の数はあっても種類が限られ、使えないケースがあった。

 備蓄を充実させたつもりでも、ニーズに合わなければ被災者に不便を強いることになる。県内市町村は、女性やアレルギー患者、高齢者など、災害時に特に配慮が必要な人の視点を取り入れ、備蓄内容を充実させてほしい。

 多くの人が被災する大規模災害には、一つの自治体の備蓄だけでは対応できず、国や近隣自治体などからの補給が欠かせない。国は自治体などが物資の調達や輸送に必要な情報を共有するシステムを運用しており、県や県内の全市町村が備蓄状況を登録している。

 政府の有識者会議は、能登半島地震では、数年間、登録内容が更新されず実態が把握できない自治体が一部にあったと指摘した。その上で、自治体にはシステムの活用の徹底を、国には避難者の人数や男女比などに応じて物資の必要量を推計し、発注を簡便化する新システムの開発を求めた。

 物資に関する情報ルートが複線化して現場が混乱し、大量の支援物資で備蓄拠点が圧迫される事態は能登半島の被災地でも繰り返された。国や自治体は、システムを駆使して必要な物を過不足なく被災者に届けることが重要だ。

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