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【2月4日付社説】春闘スタート/賃上げ阻む構造の解消図れ

2025/02/04 08:15

 賃上げの流れを中小零細企業や地方に広げ、大企業との格差是正を図ることが急務だ。

 2025年の春闘が事実上スタートした。24年の春闘では、大手企業の平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超えるなど、2年連続で高水準の賃上げが実現した。食品やエネルギー価格の高騰による賃上げ機運の高まりに加え、企業側も人手不足などを背景に「人への投資」を意識したことが大きい。

 しかし厚生労働省によると、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金で、昨年8~10月は前年同月比でマイナスだった。賃上げが進んだとはいえ、物価の高騰に追いつかず、国民は暮らしの向上を実感できない状況にある。

 労働者の賃金が上がれば、消費は活発となり、企業の収益も上がる。国内経済の成長に向け、労使が協調し、物価の上昇分を上回る賃上げを実現してもらいたい。

 連合福島によると、24年春闘では組合員300人以上の企業の平均賃上げ率は5%台に達したが、定期昇給のない300人未満の企業は3%台にとどまった。

 連合は今春の闘争方針で全体目標を5%以上、中小は格差是正分として上乗せし、6%以上とした。中小企業には働く人の7割程度が従事する。地方は中小企業で働く人が多い。地方経済の活性化に向けては、中小企業の高水準での賃上げを重視するのは当然だ。

 中小企業は大手に比べ、人手不足が深刻だ。人材の確保と定着を図るためには賃上げが迫られているが、原資の確保に苦労している企業が少なくない。

 その大きな要因は、原材料費やエネルギー費などのコスト上昇分を取引価格に転嫁できないことにある。中小企業庁の調査では、コスト上昇分を価格に全く転嫁できなかった企業は2割に上る。サプライチェーン(供給網)の各段階ごとの価格転嫁率では1次下請けが5割となった一方、4次下請けからさらに裾野が広がっていくと、3割強にとどまってしまう。

 政府は、大企業に中小との価格交渉を義務づける下請法改正案を通常国会に提出する方針だ。政府は、大企業への指導や監視を強化し、商慣行の見直しをはじめ、賃上げを阻んでいる構造的な仕組みを解消すべきだ。

 大企業で初任給を大幅に引き上げる動きが目立つなか、地方の人口流出がさらに進む恐れもある。国や県は、デジタル技術の導入による省力化など、中小企業が生産性を高めるための設備投資などを支援し、人件費の原資を確保できる環境を整えてほしい。

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