人口減少対策や復興まちづくりなどで成果を出し、県民の暮らしをより良くすることが重要だ。
県が、総額1兆2818億円の2025年度一般会計当初予算案を発表した。このうち、最重要課題の一つである人口減少対策の予算には、前年度より36億円多い639億円が計上された。
本県の人口は急速に減少しており、この10年間で20万人減の約174万人となった。昨年の本県の転出超過数は6683人で全国ワースト5位だ。
県の人口減少対策の指針となる次期総合戦略が25年度に始まる。県は、対策を強化するため、遠方で不妊治療する際の支援や、女性の健康に配慮した職場づくりの促進など、総合戦略と連動する新規事業を予算案に盛り込んだ。
その他の新規事業を含めて最低限実施されるべき施策が多く、人口減少に歯止めをかけるのに十分とは言い難い。県には、複数の施策をかみ合わせ、効果を最大限引き出すことが求められる。
県内の若者の定着や県外から本県への還流促進には、働きやすい職場づくりが欠かせない。県は、若者が労働環境を重視して就職先を選ぶ傾向にあることを踏まえ、働き方改革の推進に向けて就業規則の策定や改正などに取り組む企業への支援を強化する。
「家事・育児は女性がするべきだ」といった性別による無意識の思い込みに関する内閣府の調査では、地方から東京圏に移動した理由に、他人からの干渉が少なく、多様な価値観が受け入れられることを挙げた女性は少なくない。県は、女性の県外流出の一因と指摘されている無意識の思い込みを解消する取り組みも進める。
女性が活躍する職場をつくるには、性別に基づく役割分担意識を変えていく必要がある。県は、人口減少対策に対応する新たな官民連携組織などを通じて、施策の効果を検証することが重要だ。
25年度は第2期復興・創生期間の最終年度となる。ただ、避難指示の解除時期により地域の復興の進捗(しんちょく)は異なり、生活環境の整備が緒に就いたばかりの地域がある。特に住民のニーズが高い医療機関の充実に向けては、大熊町にある県立大野病院の後継で、双葉地域の医療を担う中核的な病院の整備事業費が計上された。
避難指示が解除された地域の存続には、高齢者や男性に偏った住民の人口構造を変えていく必要がある。県は、被災市町村と連携して教育環境の充実などを図り、子育て世代の帰還や移住定住を促進させることが急務だ。