国土交通省東北地方整備局や県などでつくる東北道路啓開等協議会は、東北地方で大地震などの災害が発生した際の道路復旧の優先順位やその作業手順を定める道路啓開計画をまとめた。道路の復旧は、人命保護や復旧作業の加速など、あらゆる災害対応に影響する。計画策定を災害対応全体の強化につなげていくことが重要だ。
東北の計画策定は、東日本大震災からの復興の影響などもあって遅れていた。東北と同様に計画が未策定だった北陸で発生した能登半島地震では、道路の盛り土に大きな被害が確認されたほか、倒壊家屋が道路をふさぐなどしたケースも多くみられた。道路を使用できる状態を保つことの重要性を改めて浮き彫りにした。
本県分の計画については、県庁や市町村役場など、災害対応の拠点となる施設に接続する道路の復旧を優先するとした。支援の人材や物資の搬送を可能にするため高速道路や自動車専用道の復旧を優先的に行うことも大きな柱の一つに位置づけられている。
災害時に幹線道路を中心に道路復旧を進めることの効果は、震災で得られた教訓の一つだ。震災時に国道4号と、甚大な津波被害や原発事故に見舞われた浜通りを結ぶ国道などの復旧を進めることで、重機などの搬送が可能となり、被災者支援とがれき撤去などの作業加速に役立った。
計画を機能させるには、関係機関や地元の建設業者が計画の目的と流れを共有することが欠かせない。県や市町村、業界団体は計画を基に、実際に災害が起きた場合の動きのすり合わせなどを行ってもらいたい。
計画は日本海溝地震などによる津波被災を想定し、中通りと浜通りを結ぶ道路の復旧を最優先で行うことを明記した。心配なのは、本県沖地震の発生直後に東北中央道が利用できない状態となったようなケースも想定されることだ。
復旧の優先順位を定めておくことはもちろん不可欠だが、災害時には利用可能な状態であることが望ましい。優先度の高い道路については、災害時にも被害が少なく済むよう耐震化などを並行して進めるべきだ。
計画は、平時から地域の建設業などの担い手を確保しておくことの重要性を指摘している。地震や津波、大雪などの際には建設業が復旧や除雪の実務を担うことを踏まえれば、当然の指摘だろう。人口減少や過疎化のなかで計画の実効性を担保するには、建設業などを維持、継続させるための策を考えねばなるまい。