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【2月8日付社説】学童保育/子育て環境充実の試金石だ

2025/02/08 08:10

 少子化の急激な進行を見据えながら、現在の需要にどう応えるかが問われている。

 こども家庭庁の調査によると、共働きやひとり親家庭の子どもを預かる放課後児童クラブ(学童保育)の利用を希望したのに定員超過などを理由に利用できない県内の児童は本年度529人となっている。過去2番目に高い水準だ。

 県は、共働き世帯の増加が要因の一つと分析している。核家族の増加など生活スタイルの変化や、地域住民のつながりの希薄化に加えて、子どもが被害に遭う事件が続発していることの影響も無視できない。かつて鍵っ子と呼ばれる子どもが多かった時代と異なり、放課後に保護者のいない自宅に帰ることのリスクは高まっている。

 本県に限らず、人手不足が深刻化し、物価高も解消されない状況が続いている。家庭で育児をしていた人が働きたい、働かなければ生活できないという世帯は増えると考えられる。子どもの安全を確保できないことが、働く障壁となるのは避けねばなるまい。

 各自治体は定住者の確保に向けて、こぞって子育て環境の充実をうたっている。そうであれば、子どもの安全を確保しつつ、安心して働ける環境の提供は当然、実現しなければならないものだろう。

 希望者全員の受け入れを阻んでいる要因の一つは、子どもたちを見守る支援員のなり手不足だ。学校の長期休業以外の間の勤務時間は、小学校の放課後が中心となるため、その報酬のみでは生計が立てにくい状況がある。ほかの産業も含めて人員確保が課題となるなかで、あえて支援員を選ぶケースは少ないのではないか。

 関係者からは午前中は別の仕事をして、放課後には学童保育を担うなどのアイデアも聞かれる。学童保育を運営する市町村などは、支援員業務を担う人が収入を確保できるモデルを示すなどして訴求力を高めていくべきだ。

 もう一つの課題は、現在のところ需要に応え切れていないものの、近年の少子化の急激な進行により、数年もすれば希望者が減っていく見通しであることだ。県内では希望者の増加を受けて、学童保育の整備が進み、この10年で施設数が370施設から491施設に増えた。地域差などを考慮する必要があるが、受け皿を増やせばいいという状況とは言い難い。

 市町村などは、現段階で学童保育に受け入れることのできていない子どもへの対応が急務だ。また、一時的に需要が増えた際に対処する仕組みづくりにも並行して注力してもらいたい。

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