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【2月9日付社説】サルの管理指針/広域連携で封じ込めを図れ

2025/02/09 08:05

 県は、阿武隈川より東の地区に生息するニホンザルに対する管理指針を策定した。県が特定の地区のニホンザルに対して指針をつくるのは初めての取り組みで、新年度から相双地方、県北地方の伊達市、二本松市などで食害防止などの対策を講じる。

 阿武隈川以東のサルは「原町個体群」と呼ばれており、東京電力福島第1原発事故による住民避難に伴い生息域を広げてきた。専門家は、これらのサルは県内の他の地域のサルとは違い、人や車両への警戒心に欠けており、放置するとさらに人の生活空間に侵入してくる恐れがあると指摘する。

 飯舘村では原発事故前、サルは一部の地区での生息にとどまっていたが、現在はほぼ全域で確認されている。食害は家庭菜園で深刻になっており、避難先と村内で2拠点生活をする住民から「楽しみにしていた菜園ができないのは厳しい」との声が上がるなど、今後の帰還や地域再生への影響が懸念されている。

 相双地方を中心としたサルの被害は、人と動物のあつれきという段階を超え、原発事故で拡大した被災地特有の鳥獣被害として対応すべき問題となりつつある。県と市町村は、管理指針の策定を契機として、人に害を与える群れの全頭捕獲も視野に入れながら、重点的な封じ込めを図っていかなければならない。

 サルの被害防止は市町村が担うものの、帰還困難区域と避難指示が解除された地区の間や、市町村の境をまたいで移動する群れがあり、単独の自治体では対応が難しい側面があった。このため県はサル対策に特化した連携会議を設置し、複数の市町村が連動した追い払いや捕獲ができるよう調整を行うこととした。

 県が広域的なサル対策を主導する意思を示したことは、一定の評価ができる。ただ、原発事故で避難指示が出された自治体では定住人口が少なく、人手が足りないことも課題になっている。県は調整だけではなく、群れの動態把握などの対策面での人的な支援も強化し、地区全体のサルの個体数を適切に管理していくことが重要だ。

 指針を踏まえ、県はサルが確認されている南限の国道288号を重点ラインとし、群れからはぐれた「離れザル」などが定着しないよう警戒を行う。まだ被害が顕著でない地域では、十分な対策が講じられていない場合もある。県には、サルを見かけた場合の追い払いや、農地への防除柵の設置など、将来的に被害が出ないような啓発活動の徹底も求めたい。

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