• X
  • facebook
  • line

【3月11日付社説】教訓を生かす 震災14年/過ちを繰り返してはならぬ

2025/03/11 08:10

 同じ過ち、後悔をしないために何ができるか考え、行動を積み重ねていくことが大切だ。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から丸14年となる。これまでの時間の速度の受け止めには個人差があるものの、本県の再生は多くの人の懸命な努力で少しずつ前進してきた。

 ただ、自然の営みが続く限り、それらがもたらす災害の脅威は拭い切れない。震災を過去の出来事と捉えることなく、備えに万全を期さなければならない。

 昨年1月に発生した能登半島地震では「災害関連死」に300人超が認定され、建物倒壊などによる直接死を上回った。高齢化が顕著な被災地で、慣れない避難生活が長引き、過労やストレスで体調を崩す人が少なくない。

 本県でもこれまで高齢者を中心に2300人以上が災害関連死に認定されている。長期の避難生活や再三の移動による心身への負担に加え、孤立などの問題も浮き彫りになった。このため、仮設住宅に暮らす高齢者世帯の生活状況の把握やコミュニティーの維持、医師や看護師による巡回診療などの重要性が指摘されてきた。

 しかし、私たちの教訓は能登で十分に生かされたとはいえず、今も尊い命を守ることができていない。「災害大国」とされながら、避難所では食料やトイレ、入浴などの不備、要介護者や女性への配慮の欠如など、避難生活の環境改善も遅々として進んでいない。

 過去の経験や失敗を踏まえ、迅速に改めることが命や暮らしを守ることにつながる。国や自治体は現状を深く反省し、住民の心身を守る取り組みを強化すべきだ。

 第1原発では処理水の海洋放出が進み、敷地を圧迫しているタンクの解体作業が始まった。原発事故以降続いてきた各国による県産の農水産物、食品などに対する各国の輸入規制は、徐々に撤廃・緩和されてきた。科学的な根拠に基づく説明、安全確保策を徹底してきたことが実を結びつつある。

 それでも課題は次々と立ちはだかる。中間貯蔵施設にある除染土壌の県外最終処分、再生利用は国民の理解が得られず、全く進展していない。原発構内にある大量の使用済み核燃料も、廃炉作業を進める上で大きなリスクだ。

 復興や原発事故は現在進行形にある。国や東電は新たな技術などに加え、過去の経験を生かし、廃炉作業などをどう着実に成し遂げるかが問われている。その重責を認識し、これまでの教訓を次の世代に伝え、安全や安心を追求し続けていかなければならない。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line