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【4月24日付社説】ガソリン補助/場当たりな対応繰り返すな

2025/04/24 08:05

 場当たりな対応を繰り返すだけではあまりにも無策だ。国民の暮らしを安定させるための抜本的な対応を検討すべきだ。

 石破茂首相は物価高やトランプ米政権の関税対策として、ガソリン価格を5月22日から、1リットル当たり10円引き下げると表明した。夏の暑さ対策として、先月使用分までだった電気・ガス料金の補助も再開するという。

 政府は2022年1月から石油元売り会社に補助金を支給し、ガソリン価格を抑制してきた。当初はレギュラーガソリンの全国平均価格を175円程度に抑える仕組みだったが、現在は185円程度に調整している。ただ最近は原油安と円高が進んだことで、17~23日の補助金は制度開始から初めて支給が見送られた。

 補助金支給は期間限定の緊急措置の方針だったが、これまで拡大と縮小を繰り返して継続し、8兆円もの巨費が投じられてきた。今回からは10円の定額値下げに切り替える。世界経済にまだ多くの不安定要素があるものの、ようやく原油価格が下落基調に入った段階だ。制度の仕組みを変えてまで補助金を継続するのは、政策の妥当性を疑われる。

 物価高に歯止めがかからないなか、ガソリンや電気・ガス料金の値下げで消費者が受ける恩恵は少なくない。今回は自民、公明両党から強い要請を受け、石破首相が決断した格好だ。

 内閣支持率が低迷するなか、夏の参院選に向けた対策との冷ややかな声も聞こえる。補助金の財源は約1兆1千億円の残高がある既存の基金を活用するものの、「ばらまき」との批判は免れない。制度終了の「出口」を設定しないまま、政権浮揚を期待して補助を続けるのは無責任でしかない。

 政府、与党は当初、高関税や物価高を受けた経済対策を行うための補正予算案の編成を計画していたが見送った。補正予算は国会審議が必要となるため、野党の協力を得なければ成立が見通せないことが背景にある。

 自民、公明両党と国民民主党は昨年12月、ガソリン税に1リットル当たり25円10銭上乗せされている「暫定税率」の廃止で合意しているが、実施時期はまだ決まっていない。公党間で合意した内容を放置したまま、国会での審議を経ずに国民生活を左右する政策を実行するのは適切ではない。

 燃料費や光熱費の動向は家計だけでなく、経済活動全体に大きな影響を及ぼす。政府、与党はその場しのぎではなく、有効な経済対策を示して国会で議論すべきだ。

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