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【4月26日付社説】津波の警戒区域指定/命守る迅速な避難につなげ

2025/04/26 08:10

 県が、浜通りの沿岸部を「津波災害警戒区域」に指定した。津波から住民の命を守るためハザードマップの整備や避難施設の確保を求める区域で、10市町の計1万3885ヘクタールに及ぶ。行政や住民が一体となった防災体制を構築していくことが重要だ。

 本県に被害を与える津波は、日本海溝や千島海溝を震源とする地震などいくつかのパターンが予想される。それらの津波から逃げるためのハザードマップはこれまで、どこまでの範囲が浸水するか、浸水するならどのぐらいの高さになるかを示してきた。

 警戒区域では、津波による浸水が想定される範囲を10メートル四方に区分し、そこに建物があった場合、津波がぶつかり建物の何メートルの高さまで到達するかという「基準水位」を示す。水平にどこまで逃げればいいのかに加え、移動できない場合にはどの高さまで垂直避難すればいいのかを知ることができるため、より確実に命を守る行動を取ることが可能になる。

 警戒区域は、東日本大震災の津波被害を受けて2011年12月から始まった制度だ。本県では、防潮堤などの復旧や整備を優先しており、指定は先延ばしになっていた。今回の浸水想定は東日本大震災で津波が来た範囲よりも広く、「以前は浸水しなかったから大丈夫」と油断することは禁物だ。10市町は、基準水位の情報を加えたハザードマップの更新など、迅速な住民避難を行うための対策を講じなければならない。

 10市町は、警戒区域内の学校や病院、介護施設など自力での避難が難しい人が利用する施設を防災計画の「避難促進施設」に位置付ける。対象施設の管理者は、安全に避難することができる計画を作り、行政に報告しなければならない。計画に基づく避難訓練の実施と、その報告も求められる。

 警戒区域の指定により、新たに避難計画を作成する施設が出ることが予想される。すでに自主的に計画を作成している施設に対しても、効果的な訓練を実施するための助言が必要だ。県と10市町は、防災に関連した部署の職員を派遣するなどして計画作りなどを支援してもらいたい。

 浜通りの自治体、特に双葉地方では震災後に進出してきた企業に勤める人や起業のために移り住んできた人などが多くなっている。県と10市町は、警戒区域の指定を踏まえ、震災以前から住む住民と移住してきた人が集まり、ともに避難場所や避難に使うルートの情報を共有する機会をつくることも心がけてほしい。

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