巨大企業が自由で公正な競争を阻んでいる状況は、利用者のためにもならない。改善の実行を強く求めていく必要がある。
公正取引委員会が、インターネット検索サービス最大手の米グーグルの独禁法違反(不公正な取引方法)を認め、排除措置命令を出した。スマートフォン端末メーカーと結んだ契約で、自社の検索アプリなどの搭載を不当に求め、他社の検索サービスの参入が困難になっていたと判断した。
グーグルに契約内容の変更や同様の行為の禁止を求め、弁護士ら第三者が5年間、改善状況を監視することも命じた。
グーグルのスマホ検索サービスは国内で8割を超え、圧倒的なシェアを誇るなか、不正取引で競争が制限されれば新規参入がいっそう難しくなり、技術革新やサービス向上を妨げるだろう。利用者にとっても不利益であり、公取委による命令は当然の措置だ。
公取委がグーグルを含む「GAFA」といった巨大IT企業に排除措置命令を出すのは初めてだ。アマゾンや米アップルなどもこれまで独禁法違反の疑いで調査対象となったが、事業者側との合意で違反を解消する「解約手続き」や自主的な改善計画の提出で終わっていたため、「弱腰」との批判も出されていた。
本社が米国にあり、立ち入り調査や関係者の聴取なども容易ではないという。ただ最近の欧米の競争当局は巨大IT企業に対し、反トラスト法(独禁法)違反で提訴したり、巨額の制裁金を科したりなど厳しい姿勢を強めている。
デジタル分野での法整備や規制が遅れていた日本でも、グーグルや米アップルを対象に、スマホ向けアプリ市場の独占を禁止する「スマホ特定ソフトウエア競争促進法」が年内に施行される。アプリストアや決済システムへの他社参入を妨げないようにする。
たとえ海外を拠点とする巨大企業であっても、国内のデジタル市場の健全性を阻害するのは看過できない。公取委は新法を運用して市場の監視を強化し、違反行為には厳しく対応すべきだ。
ネット検索サービスは広告などと連動し、巨大IT企業の大きな収入源となっている。買い物や交流サイト(SNS)など、多様なサービスを提供し、誰もが利用できるスマホは生活に欠かせないツールになっている。
巨大企業と新興勢力が技術開発でしのぎを削り、消費者がより利便性や安全性の高いサービスを自由に選択できる環境を整えていくことが重要だ。