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【4月30日付社説】温室効果ガス/省エネ支援し着実な削減を

2025/04/30 08:05

 県内で2022年度に排出された温室効果ガスの実排出量が、二酸化炭素換算で約1340万トンだった。前年度と比較すると3.6%の減少で、新型コロナウイルスが感染拡大していた20年度と同水準となった。環境に配慮した対策を積み重ね、着実に排出量を削減していくことが求められる。

 県内の排出量は、約1500万~1600万トンで推移していたが、20年度に1300万トン台まで減少した。経済活動が再開した21年度は微増の約1390万トンで、続く22年度の排出量がどのような動向になるか注目されていた。

 県は製造品出荷額が増えたにもかかわらず、産業部門の排出量が減っていることから、規模の大きな企業を中心とした再生可能エネルギーの導入などが排出量を抑制したとみている。県は、企業の取り組みを評価する受け身の姿勢にとどまらず、排出削減が次世代に住みよい環境を残すことなどを改めて広く呼びかけ、脱炭素の動きを後押ししていくことが重要だ。

 温室効果ガスを巡り、県は30年度の排出量を13年度の半分に当たる854万トンまで削減する目標を掲げている。達成するためには、単純計算で年間4%前後の削減を積み上げることが不可欠な状況だ。県は取り組みの輪を広げる対策として、経済団体などと連携し、県内企業の多くを占める中小企業を支援する枠組みを整えた。

 中小企業は、資金面などで大企業に比べ削減に着手しにくい環境にある。しかし、燃料費が高騰する中、省エネによるコストカットは中長期的に企業負担を軽くする側面もある。県は、中小企業が利点を感じながら排出量削減を実現できるよう、各業種の削減モデルの提案や設備を更新した場合の金融支援などを進めてほしい。

 22年度の排出量を部門別に見ると、産業部門が29%で最も多く、運輸部門の27%、一般家庭からの排出量を示す民生家庭部門の22%と続く。このうち、民生家庭部門は、他の部門の排出量が前年度比で横ばいか減少する中で増えており、削減に向けた取り組みを強化しなければならない状況にある。

 県は本年度、県の補助でLED照明などを導入した家庭の削減量を合算し、国の認証でクレジット(環境価値)化する取り組みを始める。クレジットは、購入で自らの排出量を相殺したい企業などに売却し、収益を次の補助事業の財源とする方向で調整が進む見通しだ。県はクレジット化を円滑に進め、一つの家庭の温室効果ガス削減が次の家庭の省エネに結び付く好循環を生み出してもらいたい。

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