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【5月3日付社説】日本郵政の不祥事/統治能力の不全を露呈した

2025/05/03 06:38

 相次ぐグループ内の不祥事は、組織に大きな病巣が潜んでいる証しだ。抜本的な改革を実行しなければ、再生は困難だ。

 日本郵便で集配業務を担う全国の郵便局のうち、75%に当たる2391局で配達員に酒気帯びの有無などを確認する法定の点呼業務が不適切だったことが判明した。

 点呼は貨物自動車運送事業法で義務付けられており、業務開始時や終了時にアルコール検知器を使って行われる。しかし、社内調査で「繁忙時は行わなかった」「面倒だから管理者がいる時のみやっていた」などの実態が確認されたほか、適切に実施していたとの虚偽の報告も少なくなかった。

 点呼のマニュアルにも不備があり、今回把握された不適切な事例には、誤った手続きで報告が行われていたものもあるという。郵便、物流事業者としてあるまじき行為である。全国2万4千の郵便局ネットワークへの国民の信頼は、地に落ちたといえる。

 調査内容を公表した直後も、都内の郵便局の配達員が集配業務中に飲酒運転していたことが発覚した。職員の規範意識や倫理観の欠如は甚だしい。再発防止策として点呼をカメラの映像で確認できるようにしたが、この程度の対応で改善が図れるとは思えない。

 より厳格な再発防止策を講じなければ、国民の信頼回復はありえないことを肝に銘じてほしい。

 国土交通省が特別監査を始めており、各地の郵便局で違反を確認すれば、配達用車両の使用停止などの行政処分を検討する方針だ。厳正な処分を求めたい。

 日本郵政グループを巡っては、日本郵便がかんぽ生命保険の勧誘などの目的で、ゆうちょ銀行の延べ約1千万人の顧客情報を不正に流用したことが発覚している。ゆうパックを配達する下請け業者への日本郵便による不当な違約金の徴収もあった。グループ全体でこうした不祥事が相次ぐのは、組織の統治能力が不全になっているからにほかならない。

 日本郵政は増田寛也社長をはじめグループ各社幹部の計14人を処分した。かんぽ生命保険の不正販売があった後の2020年に就任した元総務相の増田社長は、社内改革に意欲を見せていたが、企業風土は全く改まらなかった。組織体制の見直しを検討すべきだ。

 07年の民営化後も日本郵政の株式は政府が3割以上を保有する。度重なる不祥事は、抜けきらない官業意識が根底にあり、業績不振にもつながっていると指摘されている。緊張感に欠けた官業意識は直ちに改める必要がある。

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