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【6月6日付社説】学校給食の無償化/独自色に配慮した制度築け

2025/06/06 07:50

 地域間格差の解消とともに、良質な給食を子どもたちに提供できる環境を整える必要がある。

 自民、公明、日本維新の会の3党が2月、2026年度からの小学校給食費の無償化で合意したことを受け、政府は今夏に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」で制度設計の方向性を示す。中学校についてもできる限り速やかに無償化を実施する方針だ。

 学校給食法は、食材費を保護者負担、人件費や施設・設備費などは学校設置者の負担で、経済的困窮者の家庭の給食費は基本的に無償と定められている。ただ近年は子育て支援策、人口減少対策などで独自に無償化や負担軽減策に取り組む自治体が増えている。

 文部科学省が昨年6月に公表した学校給食の実態調査によると、2023年9月時点で条件を設けずに公立小中学校で給食を無償提供する自治体は3割を超えた。6年前の約7倍に増え、条件付きで無償化している自治体も1割を占める。県内では郡山市や北塩原村が無償化を実施している。

 多くの自治体は、ふるさと納税などの自主財源や国からの交付金を活用している。しかし財源を確保できずに無償化を見送っている自治体も少なくない。

 小中学校の給食無償化に年間約4900億円が必要とされる。居住地によって保護者の負担に差が生じている現状は解消すべきだろう。給食を実施していない学校への対応も含め、政府には公平性を重視した制度を構築してほしい。

 文科省の調査では食材にかかる費用にも自治体間で差があることが分かった。主食とおかず、牛乳がそろった「完全給食」の1カ月当たりの小学校の給食費は全国平均で4688円で、都道府県別では本県が最高の5314円、最も低い滋賀は3933円だった。

 地域の産業や健康について学ぶため、地元産品や伝統野菜などを活用し、地産地消、食育の推進に力を入れる自治体や学校がある。また安価で入手できる地元の食材を積極的に使い、費用を抑えている学校もある。一律の無償化に伴い、これまでの学校や地域のさまざまな取り組みを制限するのではなく、継続させることが大切だ。

 物価やコメ価格の高騰の動きも学校給食に影響している。福島市は1食当たりの市の補助額を増やし、給食の質と量を維持する方針だ。物価高で家計が苦しく、十分な食事を子どもに与えることができない家庭もある。無償化を待つことなく、市町村などは保護者負担が増加しないような支援策を検討してもらいたい。

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