能登半島地震では、道路の寸断などによる災害時の集落孤立化の問題が改めて浮き彫りとなった。気候の変化に伴う土砂災害の可能性も高くなっており、平時から対策を講じる「事前防災」で被害を最小限にしていくことが重要だ。
県が、地震や土砂災害に伴う交通網の寸断により、孤立する可能性のある集落が32市町村の254カ所に上ると発表した。会津や阿武隈山系などの中山間地に多く、下郷町の26カ所が最多で、伊達市と金山町の各22集落と続く。集落周辺の道路が新たに土砂災害警戒区域に指定されるなどして、2013年度に国が実施した調査から23カ所増えた。
道路が不通になった場合、救援が来るまでをしのぐ数日分の食料などがあることが望ましい。しかし、県の聞き取り調査では、対象集落の8割強が飲料水などの備蓄がないと回答している。県と市町村は、住民に家庭での備えを促すとともに、役場庁舎などで保管している毛布や燃料の資機材を対象集落に移動させるなどして、集落内での備蓄を急いでもらいたい。
孤立危険性がある中山間地の集落は傾斜地が多く、住宅周辺でも土砂崩れなどが発生する場合がある。平時から防災意識を高めておくことが求められるが、過去2~3年以内に避難などの訓練を実施した集落は約1割にとどまっている。自治体から避難指示などが出された場合、集落内で迅速な対応が取れない恐れがある。
県は今後、住民が自主的に災害時の行動などを決めておく「地区防災計画」の策定を呼びかける。ただ、集落の人口が少なく高齢化も進む状況では、外部の支援が必要だ。県と市町村は、住民同士が災害の程度に応じてどのような避難行動を取るか、どの手法で外部と連絡するかなどを共有できるよう、集落の防災力向上につながる計画策定を後押ししてほしい。
道路の復旧に時間がかかる場合は、ヘリコプターによる物資の運搬が有効だが、中山間地でヘリが着陸する場所を確保できるような集落は少ない。このため、県は本年度、孤立の恐れがある全集落を対象に、ドローンによる物資輸送の発着点や飛行ルートを検証する調査を行う。
県によれば、県内で災害時にドローンによる物資輸送が行われた事例はない。県には、市町村や福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想で進出してきたドローン関係企業などと連携を深め、集落の孤立が確認された場合に安全で着実な運用ができる体制を整えることを求めたい。