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【6月17日付社説】ジェンダー指数/社会の本気度が欠けている

2025/06/17 08:05

 身の回りにある課題の解決から着実に進め、低迷している現状を打開していく必要がある。

 世界経済フォーラム(WEF)がまとめた2025年版の「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で日本は148カ国中、118位にとどまった。24年版と同じ順位、先進7カ国では最下位で、下から2番目のイタリアは87位から85位に上昇し、差が広がった。

 報告は政治、経済、教育、健康の4分野で男女間の格差を分析して数値化した。世界全体では経済と政治の両分野で改善が見られたが、日本は女性の国会議員が少なく、過去に一度も女性の首相が誕生していない政治は125位と昨年から後退した。経済は女性管理職の少なさが127位だった。

 WEFがジェンダー・ギャップを初めて発表した06年の日本は115カ国中、80位で、以降も低水準で推移している。このままでは女性の能力や才能が生かされず、意見など社会や組織に反映されない。何より多様性に欠ける社会は生きづらさの原因にもなる。国民一人一人の危機感の欠如が大きな要因であり、格差解消の取り組みを強化しなければならない。

 政府が今月公表した、女性活躍や男女共同参画の重点方針「女性版骨太の方針2025」では、女性の中小企業での管理職登用を地方で進めることを柱に据えた。地方では、男女間の賃金格差が大きく、女性管理職の登用が進んでいないことを反映した形だ。

 今月、改正女性活躍推進法が成立し、従業員101人以上の企業に来年4月から女性管理職比率の公表を義務づけることになった。賃金格差の公表義務も現行の301人以上から101人以上の企業に引き下げられる。

 女性は結婚や出産でキャリアを中断する人が多い。特に地方は性別の役割分担意識が根強く、家事や育児、介護などの負担が女性に偏り、女性の社会進出を妨げているとされる。こうした実態が女性の都市部への流出を招いているとの指摘もある。

 地方の衰退や人口減少、少子化などを解決するためにも、国や自治体は法改正を周知するだけでなく、中小企業を後押しする具体的な施策を示し、職場の仕組みや組織風土を変えることが急務だ。

 日本の夫婦同姓制度について制度見直しの必要性が長年指摘されているものの、今国会では「選択的夫婦別姓制度」の審議が進まず法改正は先送りされた。立法府の議論が停滞したままでは、社会の変化や意識改革が進展しないことを議員が自覚し、猛省すべきだ。

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