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【8月28日付社説】道路の陥没/点検と修繕でリスク減らせ

2025/08/28 08:10

 生活を支えるインフラが、老朽化によって人命や経済活動を脅かしている状況は軽視できない。国や自治体は、危険箇所の把握と修繕に注力することが求められる。

 国土交通省の2024年度の調査で、全国各地の国道4739カ所で地下の空洞が確認され、このうち119カ所は陥没する恐れが高いことが分かった。空洞の深さや広がりに応じて危険性を3段階に分類し、深さ20センチ、幅1メートル程度の基準に該当した空洞が、陥没の可能性が「高い」と判定された。

 24年度は約3000キロで調査が行われた。国交省は今年1月に埼玉県八潮市の県道でトラックなどが巻き込まれる大規模な道路陥没が起きたことを受け、調査結果を初めて公表した。ただ、調査が行われたのは、対象となる国道の総延長約2万キロの15%にとどまる。

 国管理の道路のほか、都道府県や市町村が管理する道路、高速道などを含めると、陥没の恐れがある箇所は相当な数に上ることが想定される。国交省によると、22年度には都道府県や市町村が管理する道路を含め、約1万件の陥没が起きている。

 今回、危険性が高いと判定された空洞は1カ所を除いて修繕されたものの、その他に修繕の優先度が高いと判定された232カ所の大半は完了していない。国と自治体は、点検が済んでいない道路の調査を進めるとともに、空洞などの危険箇所を解消し、陥没を未然に防ぐことが重要だ。

 陥没につながる空洞は、道路の排水施設や上下水道施設の劣化、損傷などが要因になるケースが多い。地中にある排水管や下水道管に穴が開き、土砂や地下水が管内に流れ込んで空洞ができる。

 上下水道管などの点検や維持管理を徹底することが、空洞の発生防止になる。ただ地下は外観などから状況を把握しやすいトンネルや橋と異なり、点検や修繕に時間がかかり費用も膨大になる。

 幹線道路などの下を通る大きい管路ほど、設置から長い年月を経ているケースが多く、破損した場合には深刻な影響を及ぼしかねない。上下水道は原則、市町村や県が主体となり管理している。各自治体は交通量や整備時期などを踏まえて優先順位を付け、管の点検や更新を迅速に進めてほしい。

 国は26年度以降、自治体への補助金を拡充し、老朽化した上下水道管の更新を加速させる方針だ。しかし、小規模な自治体などは、作業に当たる技術系職員の確保が壁になっている。国は作業の効率化のためにも、自治体間の連携や民間委託を推進する必要がある。

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