国は本県の中間貯蔵施設で保管している土壌などの県外最終処分を巡り、2035年をめどに処分候補地を選定する方針を示した。30年ごろには、候補地選定に向けた調査などに着手する。今後5年程度の取り組みをまとめた工程表の中に盛り込んだ。国は、県民との新たな約束として遅らせることなく実現しなければならない。
中間貯蔵施設には、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌など約1410万立方メートルを保管している。このうち4分の3は放射性物質濃度が1キログラム当たり8千ベクレル以下で、これらの再生利用を進めて総量を減らし、残ったものを県外処分する計画だ。工程表では、5年間で工事などの「実用途における復興再生利用のめどを立てる」ことを目標としている。
土壌の再生利用は、県内の飯舘村長泥地区などでの実証事業を除けば、首相官邸の前庭でわずかに行われたに過ぎない。今後は各省庁の地方庁舎などでの利活用を進めるとしているが、それではスピード感がなさすぎる。国が主体となる公共事業での埋め立てや盛り土、土地造成などで利用を積極的に進めていくことが重要だ。
県外での最終処分の方法については、秋に設置する有識者会議で検討するとした。これまでの議論では、低線量の土壌を再生利用で使い切った上で、残りの土壌を減量化することで最終処分場の面積を最大で約30~50ヘクタール、最小で約2~3ヘクタールとする4案が出ている。有識者会議はコストや安全性を考慮し、4案の中から最終処分方法の絞り込みなどを行う見通しだ。
30年ごろに候補地選定に向けた調査を実施するには、残された時間は少ない。再生利用が進まないことなどを言い訳に対応を先延ばしするのは、苦渋の決断で中間貯蔵施設を受け入れた県民への不誠実な対応に他ならない。国には、早急に候補地選定の手続きや受け入れを促進するための手法を明確にすることを求めたい。
除染土壌の再生利用について、国は国民的な理解醸成を目指してきた。しかし、工程表には、中間貯蔵施設の見学会やウェブページを通じた情報発信を行うことが記されているにとどまる。
幅広い理解を得る努力を続ける必要はあるが、十分な結果が出ていない状況を踏まえれば、特に注力する地域を設けるのも一つの手だろう。国は、福島第1原発で発電された電気の恩恵を得ていた首都圏、核燃料サイクルに伴う廃棄物処理に関心がある自治体などに対し、土壌の再生利用の協力を求めることを検討すべきだ。