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【9月2日付社説】防災週間/備え重ねて被害の減少図れ

2025/09/02 08:10

 国は5日までを防災週間に定め、防災訓練などの実施を求めている。大規模な林野火災や活発化している火山活動なども含めた多様な災害に備え、「自助」「共助」「公助」を組み合わせることで、被害を最小限にするための取り組みを進めていく必要がある。

 ロシア・カムチャツカ半島付近を震源に7月30日に発生した巨大地震では、本県沿岸部に津波警報が出された。各地で避難が相次いだが、県が災害対策本部を設置したのは警報発令から約7時間後だった。設置の要件は、県内での震度6弱以上の地震や大津波警報の発表などで、海外の地震で遠くから来る津波は死角になっていた。

 県は今後、対策本部を設置する要件の見直しも含め対応を検証する考えだ。本県は東日本大震災を経験したが、14年が経過し行政の担当者も世代交代している。県や市町村は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など被害をもたらすことが想定される災害を中心にリスクを見直し、避難所開設や支援物資の供給などに臨機応変で対応する体制を整えてもらいたい。

 県によれば、防災に関する民間資格「防災士」の県内登録者が初めて5000人を上回った。自然災害が多発する中、防災への関心の高まりが背景にあるとみられる。県は各地の防災士に対し、県の「地域防災サポーター」への登録を促し、平時から地域での活動に関わってもらうことを目指している。

 大規模災害では通信網の途絶などで、行政からの連絡が届かない場合がある。国は、地区住民が自主的に災害時の行動を決めておく「地区防災計画」の策定を呼びかけているが、県内では19市町村の54地区にとどまる。県と市町村は防災士らと連携し、住民同士が地区の課題を共有し、助け合いの関係を構築できるような計画づくりを後押しすることが重要だ。

 災害の状況で避難できない時や家族に特別な配慮が必要な場合には、自宅で避難生活を送ることも選択肢となってくる。自宅が安全な場所になるような耐震補強や家具の配置、最低でも3日分、可能であれば1週間分の食料や水の備蓄など、一人一人が命を守るための取り組みを心がけてほしい。

 近年は、集中的な豪雨による災害が多発している。都市部に降った雨が下水道などの処理能力を超え、河川に排出されず住宅地にあふれ出る「内水氾濫」も発生しており、過去の経験を過信することは危険だ。各家庭で自治体が公表しているハザードマップなどを確認し、避難所の位置を把握しておくことも忘れないでおきたい。

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