県立博物館の吉田純輝学芸員(33)らの研究グループは、モンゴル・ゴビ砂漠にある太古の地層から、分厚く頑丈なドーム状の特徴的な頭で「頭突き恐竜」の名で知られるパキケファロサウルス類で世界最古となる新属新種の化石を発見した。古い時代からドーム状の頭を持っていたことが分かり、研究グループは「ドーム状の頭がどのように進化したのかという疑問に、初めて具体的な答えを示す発見」とした。研究論文は17日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。
白亜紀前期(約1億1千万年前)の地層から全身骨格を2019年に発見し「ドーム頭の恐竜の起源にして、尊い宝」を意味する「ザヴァケファレ・リンポチェ」と名付けた。研究グループによると、従来の化石は約8千万~約6600万年前の白亜紀末期のものが多く、これまでの最古の化石から、少なくとも約1400万年さかのぼった。全身の骨格が残るまれな化石で、推定体長は約1メートル、推定体重は5・85キロという。
化石は、パキケファロサウルス類の中で最古かつ原始的であるにもかかわらず、頭の骨がすでに発達したドーム状の構造を持っていた。解析の結果、進化の初期段階からドーム状の頭を使い、繁殖の相手を巡る闘争などの社会的コミュニケーションをしていた可能性が出てきた。
化石は少なくとも2歳以上の若い個体で、成長しきる前にドーム状の頭が機能していたことも判明した。成長途中から「配偶者を巡る闘い」などの社会的、性的アピールに使っていた可能性が高く「骨格的な成長よりも、先に性的に成熟する早熟戦略を取っていた」と推測できるという。
吉田さんらは毎年、モンゴルで探査活動を続けている。今後の発見や解析で「近縁種と同じように頭突きをしていたのか」「別の目的でドーム状の頭を使っていたのか」などの謎の解明につなげたいとしている。
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パキケファロサウルス類 化石はこれまで主にアジアや北米大陸で発見されてきた。骨の一部のみ発見されることがほとんどで、発見例も16種と少ないことから、生態や進化の過程についてほとんど分かっていない恐竜グループ。他の恐竜に比べて生きていた姿や生活の様子、分類、成長パターン、運動能力など多くの基本情報が判明しておらず、「謎の恐竜グループ」ともされる。