選挙で与党を過半数割れに追い込み、政治空白を批判しているだけでは、責任政党としての役割を果たせない。各野党は与党、野党間での連携の在り方、喫緊の政策課題などにどう取り組むのか、その道筋を具体的に示すべきだ。
自民党総裁選が告示され、5人の候補者による論戦が本格的に始まった。少数与党の現状を受け、今回の総裁選では野党との連携の在り方が焦点だ。連立の枠組み拡大に言及している候補者もいる。
一方、野党側に政権交代への具体的な動き、野党共闘に向けた議論は低調だ。野党第1党の立憲民主党が先の参院選で「事実上の敗北」を喫したことで、機運は高まっていない。国民民主党や日本維新の会は昨年の衆院選以降、独自の政策を実現するため、与党と個別に協議してきた。両党はその流れを踏襲し、与党との距離を測りつつ、野党側の主導権を握りたいとの意図もあるのだろう。
立民は野田佳彦代表が執行部を刷新した。しかし自民と同様に解党的な出直しを図らなければならない状況にある。たとえ自民が新体制を発足しても、前と同じ与野党の関係では、国民が選挙で示した民意は生かされないことを、野党は認識しなければならない。
野党は政治空白の長期化は許されないとして、9月中の臨時国会の召集を求めている。しかし、新しい政権が発足するまでの手続きを踏まえれば、臨時国会の召集は10月中旬以降になる見通しだ。
自民、公明と立民の3党は中低所得者に税控除と給付を同時に実施する「給付付き税額控除」の制度設計に向け、協議体を設置することで合意した。3党はガソリン税の暫定税率の年内廃止も議論を加速する方針を確認した。
総裁選の期間中であっても、政治改革や物価高対策などの政党の枠を超えた協議は可能だ。臨時国会の召集を待たずに、与野党間の政策担当者らがスピード感を持って議論し、一定の方向性をまとめることも重要になる。
野党各党はそれぞれの基本政策や公約の実現を与党側に迫るだけでなく、他の野党との議論を通して考え方や政策の隔たりを埋め、その実現可能性を探るべきだ。
自民の新総裁誕生後には首相指名選挙が行われる。石破茂氏と野田氏による決選投票にもつれ込んだ1年前は、立民が野党をまとめられず、国民や維新が決選投票でもそれぞれの党首に投票した。
立民は野党第1党としての政権構想を具体的に示し、他の野党との協議を誠実に積み重ねることが求められる。