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飯舘・長泥で待望稲刈り 震災後初のコメ出荷へ

2025/09/25 10:00

黄金色に染まった田んぼで待望の稲刈りをした庄司さん(中央)と杉岡村長(左)、鈴木復興副大臣=飯舘村長泥地区

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除された飯舘村長泥地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の田んぼで24日、地区住民らが稲刈りをした。収穫したコメは全量全袋検査で放射性セシウム濃度が食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回れば、原発事故後初めて市場に出荷される。長泥地区産のコメの流通は15年ぶりとなる。

 長泥地区では、復興拠点の避難指示が解除された2023年から、コメの出荷制限解除に向けた試験栽培と実証栽培が行われた。収穫したコメは出荷せず、放射性物質濃度を測定した後に廃棄された。2年間の栽培で安全性に問題がないことが確認されたため、県と村の管理計画に基づき、今年から出荷を見込んだ稲作が可能となり、5月に営農が再開された。

 この日は秋晴れの下、黄金色に染まった田んぼで持ち主の庄司喜一さん(78)や地区住民に加え、杉岡誠村長や鈴木憲和復興副大臣らが稲刈りに参加した。約25アールの田んぼに県オリジナル品種「里山のつぶ」約1000キロが実り、参加者が手作業と機械で刈り取った。

 庄司さんは東日本大震災と原発事故前、長泥地区で兼業農家を営んでいた。現在は避難先の福島市で暮らす。田植え後は週2日ほど長泥地区に通って農作業をこなし、稲の成長を見届けていた。庄司さんは「長泥でもう一度コメを作れるとは思わなかった。最高にうれしい。80~90%の出来栄え」と笑顔で話した。杉岡村長は「皆さんと喜びを味わえた。今後も村全体の発展に力を尽くしたい」と述べた。

 今回収穫したコメの一部は、10月18日に長泥コミュニティセンターで開かれるマルシェで、カレーなどに料理して振る舞われる予定だ。

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