二本松市で開かれる二本松の菊人形会場を飾った菊花を焼き物の釉薬(ゆうやく)に再活用した「菊花釉」の今年の作品が出そろった。県の伝統的工芸品「二本松萬古焼」唯一の窯元井上窯当主の井上善夫さん(76)がおととしから取り組んでいる。今回は大菊を中心に回収、焼却して釉薬を作っていて、井上さんは「色合いはほとんど変わらないが、釉薬としては柔らかいようだ。濃度や焼く温度を変えて特性を見極めたい」と定着へ意欲を見せている。
菊花釉は、菊人形が終わると廃棄していた菊花を再利用して誕生した。二本松菊花愛好会の協力で昨年11月、軽トラック約3台分の大菊を回収、自然乾燥させた後、焼却して灰を取り出し、花だけの釉薬60グラム、花と茎を含めた釉薬900グラムが仕上がった。
昨年同様、ぐい飲みを取りそろえたほか、新たに菊の葉脈を押し型にした「菊皿」、花の釉薬だけを使った「大輪ぐい飲み」を製作した。井上さんは「県ハイテクプラザが菊花釉に蒔絵(まきえ)を施す試みも行った。菊花活用は広がりを見せている」と期待している。
菊花を提供する同愛好会の伊東勝夫会長(74)も「69回目の菊人形を前に、ようやく再利用へ光が見えてきた。二本松の新たな産品になるよう願う」と後押しする。菊花は染め物としても研究が進められている。菊花釉シリーズは2500円~1万円(税別)。問い合わせは井上窯(電話0243・23・2195)へ。
今年は10月10日開幕
第69回二本松の菊人形は「華やぐ江戸文化~蔦屋重三郎が生きた世」をテーマに10日~11月18日、二本松市の霞ケ城公園で開かれる。