クマの被害が深刻になり、政府が関係閣僚会議を開く事態になっている。本県でも市街地に寄せ付けない取り組みと、生活圏に入ってきた場合には着実に排除する対策を組み合わせ、地域の安全を確保していかなければならない。
県によると、本年度のクマによる県内の人身被害は18人と過去最多で、目撃件数も前年度を上回る水準で推移している。昨秋は山の木の実が豊作で、多くのクマが生まれたとみられる。今秋は一転し凶作となり、数が増えたクマが餌を探して人里に下りている可能性が高い。同様の状況は、2023年度にも確認されている。
23年度は、山から餌がなくなる11月にクマの目撃が急増し、冬になっても冬眠しない個体が人里近くで活動した。本年度も同じような経過をたどるようなら、例年より多いクマが生活圏に迫ってくることになる。県や市町村は、現在のクマの危険度を災害級と捉え、対策を急ぐべきだ。
山にいるクマは、柿などの餌となる果実や農作物などにひかれ、草やぶなどに隠れながら集落に近づいてくる。人間の生活音などに慣れると、管理されていない河川敷などを移動ルートにし、市街地の中心部にまで侵入してくることが分かっている。
喫緊の対応として、草やぶ化した河川敷の管理の徹底が必要だ。河川を管理する自治体は、草が枯れるからと油断せず、鳥獣関係の予算が不足するようなら、河川関連の事業費で実施することも視野に入れてほしい。併せてクマが人に危害を及ぼす場合に備え、市街地での「緊急銃猟」ができる準備を進めておくことも求められる。
抜本的な解決策としては、山と集落の間にクマを寄せ付けない「緩衝地帯」を設けることが挙げられる。ただ人口減少の中、個人や自治体レベルでの取り組みは難しいのが実情だ。全国の中山間地に共通した課題として、国が集中的に対策を講じることが重要だ。
県は被害を防止するためには、「人のクマ慣れ化」を解消していくことも重要とみている。「昔からクマがいるから」「これまでは大丈夫だった」という、クマの危険性を過小評価する思い込みを指す。実際に、散歩道や住宅近くで被害に遭うケースが出ている。
県がまとめた事故を減らす10カ条には「キノコ刈りはリスクが非常に高く、たとえ鈴などを携行していても命がけになる」など強い言葉が並ぶ。一人一人がクマの情報に関心を高め、クマが出没した場所に近づかないなど、生活行動を変えていくことが求められる。

 
         
     
                     
                                                                                             
                                                                                             
                                                                                             
                                                                                             
                                                                                             
                                                                                             
                                                                                             
                                                                                             
     
     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
     
				