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【11月5日付社説】国会議員の削減/結論ありきの議論は危うい

2025/11/05 08:10

 議会制民主主義の根幹部分に踏み込むだけに、結論ありきの拙速な議論は避ける必要がある。

 高市早苗政権の誕生に結び付いた、自民党と日本維新の会との連立合意に際し、衆院議員定数の1割削減が合意書に盛り込まれた。「臨時国会で議員立法で法案を提出し成立を目指す」と明記した。

 「身を切る改革」を旗印に掲げる維新は、大阪府議会の定数を109から段階的に79に減らしてきた。吉村洋文代表はこの実績を「改革の原点」と重視し、今回の連立合意では「絶対条件」として自民に強く迫った格好だ。

 ただ削減の対象となるのは、小選挙区か、比例代表かなどは明示されていない。両党内では比例代表の50議席程度を対象とする案が有力視されている。

 衆院議員の定数は、小選挙区289、比例代表176の計465だ。現行の小選挙区比例代表並立制が導入された1996年の衆院選は定数500で実施されたが、その後は削減が続き、現時点では戦後最少になっている。

 これまでの定数削減は国勢調査の結果などを踏まえ、与野党で議論されてきた。今回は与党間の合意でしかない。高市首相はきのう、国会で「できるだけ幅広い賛同を得ることが重要だ」と各党間の議論の必要性を指摘した。国会で議論を深めるべきであり、維新は1割削減を主張するならばその目的や効果、根拠を説明してほしい。

 現行の選挙制度では小選挙区に民意の集約による政権選択機能、比例代表に小選挙区ですくい切れない多様な民意を反映させる役割が期待されている。実際、小選挙区での勝利が難しい中小政党は比例で議席を得ており、現在の多党化の動きにもつながっている。

 国会議員の定数を巡っては、1票の格差是正のため、小選挙区の区割りが何度も見直され、地方選出の議員が減少してきた。若年層の人口流出や高齢化、地域産業の衰退などに直面している地方の声が、国政に反映されにくい状況になっているのは否めない。

 区割りの変更など、意見集約が困難なテーマに踏み込まず、短期間で結論を出すための比例の削減なら看過できない。一方、選挙区で敗れた候補が比例で復活当選する仕組みに批判的な意見が多いのも事実だ。選挙制度を含め、より包括的に検討してもらいたい。

 維新が定数削減を主張して支持を集めてきたのは、有権者の政治家への根深い不信感がある。国会議員の定数削減を急ぐ前に、「政治とカネ」を巡る問題などの根絶に力を尽くさなければならない。

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