東京電力福島第1原発事故による全町避難が続く双葉町は14日、仙台市で帰還困難区域内に整備中の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除についての住民説明会を開いた。説明会は各地で開催しているが、県外では初となった。参加者の一人は「古里との絆は断ち切りたくないが、帰還となると考えてしまう」と、苦しい胸の内を明かした。
JR仙台駅近くの説明会の会場の中には、双葉町長塚地区から宮城県岩沼市に避難している斎藤吉弘さん(70)、清子さん(66)夫婦の姿があった。原発事故後、佐藤さん一家は避難先を転々とした後、吉弘さんの生まれ故郷の宮城県に腰を落ち着けた。
「私たちは双葉との関係を断ち切りたくないの。住民票は双葉のままなんだよ」。午前の説明会が終わった後、清子さんが現在の心境を教えてくれた。二人は今も春と秋の彼岸には、双葉に残した先祖の墓にお参りすることを欠かさない。
清子さんの家は町が「6月以降」の避難指示解除を目指す復興拠点内にある。帰還するかどうかについて吉弘さんは「宮城に生活の拠点ができていて、(双葉町の)自宅も解体したので難しいと思う」と語る。
ただ、2人には気がかりがある。清子さんは「両親が苦労して買い求めた土地で、私は老後を庭いじりで暮らそうとしていた。愛着のある土地なので、誰かに利用してもらえればいいけど。先祖のお墓もあるし、どうなるんだろう」と語る。
2人の親族の家は、復興拠点の外の地域にある。午後からの説明会は、その復興拠点外の住宅や土地に関するテーマだったが、参加した男性からは「私たちには先がない。何も決まっていない状況ではないか」との声が上がった。
宮城県には避難した双葉町民が集まる会があるが、その中では「あなたは(拠点内だから)いいね」との声が聞こえ始めているという。男性は政府の担当者に「分断をつくるようなことはやめてくれ」と訴えた。
別の70代の参加者の男性は自宅は復興拠点内にある。しかし、思いは複雑だ。「10年は帰れないと考えている。俺が双葉に帰るのは、骨になってからではないか」と、宮城の地から古里へ思いを馳せていた。
双葉町の住民説明会は6月4日まで、県内外で開かれる。