厚生労働省が、過去に同省が提示した考え方に反し、療育手帳を持つ知的障害者の臓器提供を一律に見合わせるとの見解を示し、日本臓器移植ネットワークや、現場で患者や家族と接する都道府県コーディネーターの活動に影響を与えていた可能性のあることが21日、分かった。複数の関係者が共同通信の取材に証言した。
臓器移植法は「提供に関する意思は尊重されなければならない」と規定。厚労省は2010年、同法の運用指針を巡る議論で、意思表示が難しい知的障害者などからの提供は見合わせるとしつつ、療育手帳を持つ人からの提供は「手帳の有無だけではなく、個別の事情に応じて慎重に判断する」との考え方を示していた。だが異なる見解が現場に伝わり、一部の提供意思が生かされなかった恐れがある。
厚労省の担当者は「手帳だけで判断しないという運用を続けてきた」とした上で「過去に口頭でやりとりした内容は、記録がないので分からない」としている。移植ネットも、一律不可とする指示などがあったことを示す文書は残っていないとしている。