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仲村トオル、1話12分の短尺ドラマに興味 きっかけは「TikTokより長い動画みるのだるい」発言

07/09 08:30

  • エンタメ総合
ドラマ『飯を喰らひて華と告ぐ』(7月9日より放送開始)主演を務める仲村トオル(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

 1985年の映画『ビー・バップ・ハイスクール』でデビューし、来年40周年を迎える俳優の仲村トオル。今年前半は38年前から演じている刑事役で出演した映画『帰ってきたあぶない刑事』が公開されて話題になった。今年後半は、まったく新しくて異色のドラマ『飯を喰らひて華と告ぐ』(TOKYO MXにて7月9日スタート、毎週火曜 後11:45※TVerにて配信あり)で主演を務める。これまで「役者的な食欲に忠実に」キャリアを積んできたが、「今までほぼやったことがないような役柄で、ほかに類をみないようなドラマになるんじゃないか」と興味をひかれたという。

【動画】仲村トオルのかけがえのない1本『ライフ・イズ・ビューティフル』

 『飯を喰らひて華と告ぐ』は、足立和平氏による同名グルメ漫画が原作(白泉社「ヤングアニマルWeb」連載)。東京のとある路地裏に佇む、中華屋のような店構えの料理屋「一香軒」(いっかげん)。この店の店主は料理の腕は超一流だが、お客さんの悩みを勝手に勘違いし、検討違いなアドバイスを繰り広げる、ズレたオヤジ…。そんな主人公の店主を仲村が演じ、各話のゲストと一期一会の人間ドラマを繰り広げる。

――オファーを受けたときのお気持ちは?

【仲村】まず「1話12分、1話完結のドラマ」だと聞いて、興味が湧きました。うちの次女から「友達が『TikTokより長い動画みるのだるい』って言ってた」と聞いて、十代二十代の若者たちは、そんなに映像鑑賞持久力が落ちてきているのか、と衝撃を受けたばかりで。1話12分のドラマって、面白そうだな、と思いました。

――仲村さんが演じた“店主”は、料理の腕は間違いなく一級品だが、驚くべき“勘違い”と、もはや奇跡的な思いこみで、全く見当はずれなアドバイスを自信満々に放つキャラクター。客が困惑したり、腹を立てたり、笑い出したりしても、まったくもってお構いなし。店主を演じるうえで心がけたことや役のみどころを教えてください。

【仲村】勘違いの振り幅というか、あまりにもスケールがでかい勘違いをするので、この店主は、じつは自分の居場所が見つからない少年や生きる気力を失いかけた青年を励ますために、あえて勘違いをしたふりをしているんじゃないか、と深読みしてたんですけど、監督やプロデューサーに確認したら、「全部、勘違いです」と言われました(笑)。それならば、と腹をくくって、勘違いしているふりなんて意識はまるで持たず、自分は100%間違っていないと信じている店主を演じようと思いました。カットがかかった後、あまりの勘違いぶりに、「さすがにこの人、ちょっとおかしいんじゃないの?」って、笑っちゃったこともありましたけど。

 料理シーンはクランクイン前に、ドラマの料理監修の先生について、できるだけの準備をして撮影に臨みましたが、リアルに見えるかどうかということより、撮影カメラマンや監督と、卵を割る場面で「もうちょっと高い位置からかな」とか、ハンバーグのたねを中華鍋に投入するときは「もっと大きなフォームがいいかも」などと話し合いました。リアルよりも大げさに、ばかばかしく、格好つけすぎて笑えるみたいなものを目指していました。今までほぼやったことがないような役柄で、ほかに類をみないようなドラマになっているんじゃないかと思います。

■来年でデビュー40年、実感が湧かない

――「ハンバーグ」は第1話に登場しますね。とある会社のサラリーマン(田村健太郎)が、上司に叱責され、むしゃくしゃしたまま「一香軒」に迷い込み、肉汁タップリのハンバーグを注文する。店主と各話に登場する客のコントラストが絶妙です。

【仲村】原作の足立先生に撮影後にお会いしたときに、生身の俳優同士が演じると、お互いに反応し合うので、原作よりも「店主」のキャラが濃くなってしまったような気がします、と伝えたところ、「漫画では店主のキャラクターが際立つように、あえて客のリアクションの方はあまり作り込まずに描いている」「ドラマにはドラマの味があっていいのではないか」とおっしゃってくれたんです。そう考えると、ゲストとして出てくださった俳優の方々が「店主」というキャラクターの新しい調味料になってくれたような気がします。

――シリアスから今回のようなコメディーまで、仲村さんが演じる役の振り幅も大きいと思うのですが、ご自身の中で何かこだわりはあるのですか?

【仲村】よく役者的な食欲に忠実に、みたいな言い方をするんですけど、焼き肉が続いたから蕎麦が食べたいなとか、今日暑かったからビールが飲みたいなとか、寒かったから熱燗がいいなみたいな感覚で。最近、エリートとか、偉い人とか、有能とか、敏腕とか、そういう役が続いているなと感じていて、ダメダメな感じの人の役、ばかばかしい感じの作品もやりたいなって思っていたタイミングで今回のお話をいただいた気がします。

 でも、シリアスであろうと、コメディーであろうと、どんな役であっても現場に入ってしまえば同じといいますか、監督が何を求めてるのか、自分がやるべきことは何か、期待されてることは何か、といったことに向き合って、それに応えていく。それだけですね。

――デビューから来年で40年。第一線で活躍し続けることができた秘訣は何だと思いますか?

【仲村】そもそも、第一線で活躍し続けたなんて全然思ってないです。ヨットに例えると、全く風吹かないわって思ったことも、なんで俺が歩く道だけ逆風?って思ったことも、何回もあります。ある番組で山を登ったときに思ったんですけど、地図上の直線距離は500メートルでも、実際に歩いてみると200メートル登って100メートル下って、また150メートル登って、50メートル下ってみたいなことをしないと目的地にたどり着けなかったりするわけで。そういうものか、と。まさにそういうアップダウンのある道を歩いてきたように思います。

 以前、似たようなことを聞かれて、「たぶん運がよくて、あきらめが悪かったんでしょうね」と答えたことがあったんですけど、来年で40年といわれても、実感が湧かないんですよね。20代前半の頃は、先輩方を見て、積み重ねた年齢、経験に相応しい重量感みたいなものを感じていたような気がしますけど、いざ自分がなってみると、ちっとも重さを感じない。でもそれをポジティブに言うとしたら、この40年という月日を「重くないね」って言えるぐらいの筋力はついているってことなのかな。鍛えられてきた分は、自分の身になっていると言えるような感覚もあったりします。

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