• X
  • facebook
  • line

奇跡のピアノ...いわきから能登へ 14日、七尾で演奏会 希望の音色

07/13 08:20

能登半島復興支援コンサートに向けて「奇跡のピアノ」の調律を進める遠藤さん=12日午後、いわき市

 東日本大震災による津波で被災し、その後、復活を遂げた「奇跡のピアノ」を使ったコンサートが14、15の両日、能登半島地震で被災した石川県七尾市と穴水町で開かれる。企画したのは、ピアノの修復を担ったいわき市の調律師遠藤洋さん(65)だ。「直せるか分からなかったピアノから音が出た。その音に一歩踏み出す勇気をもらえたんだ」。13年前、失意のどん底にいた福島県民を支えた希望の音色が能登のまちにも響く。

 「ぽーん、ぽーん...」。12日午後、遠藤さんの姿がいわき震災伝承みらい館にあった。コンサートに向け、同館に常設されている奇跡のピアノを調律するためだ。弦を緩めたり張ったりすることで、不協和音はいつしか心地よい和音へと変わっていく。ピアノや鍵盤の表面に付いた汚れも落とした遠藤さんは「いい音でしょ。傷だらけだけど」とピアノをなでた。

 このピアノは沿岸部にあった豊間中の体育館に置かれており、津波にもまれた。砂や海水の影響で、鍵盤を押してもかすかな音しか出なかったという。1万点以上の部品を交換するなどし、再び音色は奏でられた。「奇跡のピアノ」との通称はこうした過程から名付けられ、テレビ番組などでも希望の調べを響かせてきた。

 能登でのコンサートは、遠藤さんが企画。元日に目にした凄惨(せいさん)な光景が、13年前のあの日と重なったからだという。「(奇跡のピアノの)音色が被災地の役に立つかもしれない」と交流サイト(SNS)などで協力を呼びかけ、2市町での開催が決まった。

 遠藤さんによると、県外の自然災害の被災地で希望のピアノを使ったコンサートは初めて。13日早朝にいわき市を出発、自らトラックを運転して、七尾市の会場に運び入れるという。

 5月中旬に2市町を訪れたという遠藤さんは、子どもたちの疲れた表情が今も心に残っているという。それだけに、13年前に傷ついた人たちの心を優しい音色で癒やした奇跡のピアノが持つ力に期待を託す。「子どもたちにちょっとでも笑顔が戻ればいいかな。あとは、このピアノが(音を出すことを)諦めなかったことは伝えなきゃな」(折笠善昭)

 15日には穴水で

 コンサートは、14日が七尾市の花嫁のれん館、15日が穴水町ののとふれあい文化センターで開かれる。時間はいずれも午後2時から。遠藤さんと交流があり、東北の被災地支援を続けているピアニスト西村由紀江さんがピアノを演奏する。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line