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コメ高騰で家計直撃 猛暑での品質低下、訪日客増が影響

07/23 08:00

2023年産米の価格が高騰し、大文字屋米穀店の斎藤社長は「30年ぶりの値動きだ」と話す

 コメの価格が高騰している。昨夏の猛暑による品質低下やインバウンド(訪日客)需要の高まりなどを背景に、全国的に品薄感が広がっているためだ。県内の販売店や飲食店にも影響は広がり、一部スーパーなどでは「購入制限」がかかる事態となっている。今後も高止まりが予想され、家計への不安が続きそうだ。

 農林水産省によると、2023年産米の相対取引価格(全銘柄平均、6月速報値)は玄米60キロ当たり1万5865円で、昨年同期の1万3865円と比べて14%高くなった。昨夏の気温上昇による高温障害などで1等米などの流通量が低下。1等米の価格が上がったことで全体の価格上昇につながったとみられる。新型コロナウイルスの5類移行やインバウンドの増加などに伴う外食需要の高まりも影響しているという。

 「これほどの値動きは(1993年の冷夏による大凶作以来)30年ぶりだ」。福島市の大文字屋米穀店の斎藤重徳社長(55)はため息をつく。同店によると、コメの値段は4月ごろから上がり、現在では60キロ当たりの仕入れ値は昨年より2千~3千円ほど上昇。同店では取引先と交渉し、販売価格に1キロ当たりプラス30~40円を反映したが、斎藤社長は「正直まだ足りないくらいだが仕方がない」と苦笑いする。

 福島市で県産コシヒカリを使ったおにぎりを中心に提供する「夜菜(やさい)食堂 米むすび」では、少しでも安く販売する業者を探して仕入れ先を変更。それでものりの価格高騰なども相まって、おにぎり1個当たり10~30円の値上げに踏み切った。高橋直人店主(48)は「苦渋の決断。光熱費の節約など工夫を重ねてきたが値上げせざるを得ない」と複雑な胸の内を明かした。

 県内のスーパーの売り場では、「1家族につき1袋まで」といった購入量を制限する張り紙も見られる。福島市の主婦鴫原千春さん(53)は「コメの価格は安定しているイメージだったが、値上がりした実感はある。まさか購入制限になるとは」と驚いた様子だった。

 ただ、福島地区米穀卸商業協同組合によると、一部銘柄では品薄状態にあるがコメの全体量としては逼迫(ひっぱく)しているわけではないという。今後の値動きは横ばいで続くとみており、担当者は「新米の出来が昨年と同程度であれば高値で取引が始まり、収穫量次第では価格が落ち着く可能性もある」と分析する。

 購入業者が増加 県産米に注目も

 福島大食農学類の小山良太教授によると、昨年は「コメどころ」として人気が高い新潟県などで1等米の比率が特に低かったことから品薄になり、本県産米を購入する業者が増えたという。小山教授は「福島のコメが注目されるかもしれない。福島産のコメはおいしいという認識が広まれば」と話している。

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