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元調教師「競走馬の寿命、全うさせたい」 鮫川に受け入れ施設整備

07/24 09:10

「自分が面倒見た馬を、最期まで世話したい」と語る栗林さん。手前がイサチルエース

 引退した競走馬や乗用馬を受け入れようと、鮫川村に移住した栗林信文さん(56)が同村で馬小屋や放牧地の整備を進めている。引退馬の多くが殺処分される現実を知り、寿命を全うできる場所をつくりたいと思った。今後は馬の堆肥を使った野菜栽培で農業体験なども検討しており、村の新たな観光スポットとしても期待が高まる。

 「自分のために頑張ってくれた馬たちを見てあげたい」。引退馬を受け入れるNPO法人「お馬のお家」代表の栗林さんは語る。

 京都市出身。4月まで川崎競馬場所属の調教師として、馬主から預かった競走馬のトレーニングを行ってきた。同村内に整備を進める馬小屋では現在、競走馬を引退したイサチルエースとクロムルキナの2頭を飼育する。「イサチルエースは最近まで現役だった馬。2頭とも気性が荒いね」。頭をなでられてうれしそうな2頭も、栗林さんが調教した元競走馬だ。

 28歳で同競馬場に勤務し、2011年に調教師となった。馬と接するうちに「引退馬の最期」について疑問を持つようになり、答えを知って驚いた。「最期まで寿命を全うできる馬はほぼいない。乗馬や繁殖牝馬に転用される馬もいるが、ほとんどが殺処分されてしまう」と栗林さん。引退馬のケアを行える場をつくろうと決意した。

 東京都内の移住相談センターなどで馬小屋を整備する場所を探す中、景観が良く、都内からの交通手段も良いと感じた同村を選んだ。今年5月に移り住んで約3カ月。牛舎を馬小屋に改修したり、放牧地や牧草の整備をしたりして汗を流す。馬小屋の周辺には、「江竜田(えりゅうだ)の滝」や住民が手入れしているアジサイロードなど村の観光スポットがある。村担当者は「村の新しい観光資源としても期待できる。農地の有効活用にもつながり、応援していきたい」と語る。

 観光地化目指す

 今後は引退馬の預かりを増やし、馬や土に触る機会の少ない人に向けた農業体験会や宿泊施設の整備などにも取り組む。栗林さんは「馬の最期を見届けると同時に、村や県の観光地として足を運んでもらえる場所にしていきたい」と力を込める。(伊藤大樹)

 1口3000円会員募集

 「お馬のお家」は、月1口3000円の会員を募っている。1年間会員を継続した人には、同法人が栽培したニンジンやホウレンソウなどの野菜を送る予定だ。受け入れる馬は、去勢馬であれば馬の種類や大きさなどは問わない。健康手帳があり、健康で妊娠していないこと、予防注射の確認できる書類などがある馬を対象に、1頭当たり月額4万2000円で受け入れる。

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