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「24年問題」経営改善モデル着手 福島県診断協、県内運送業を支援

07/25 07:32

 トラック運転手の残業規制により人手不足が懸念される物流の「2024年問題」を受け、県中小企業診断協会は、運送会社の経営改善モデルの作成に着手した。これまで協会が手がけてきた経営改善指導のノウハウを基に、専門的なデータ分析の手法や取引先との値上げ交渉の判断基準などを取りまとめる。作成後は研修会などを通じて県内の商工団体や運送会社にモデルの普及を図り、経営改善や長時間労働の是正に役立ててもらう考えだ。

 県内の運送会社では残業規制導入で働き方の改善が進む一方、運転手の不足などが深刻な経営課題となっている。協会では運送会社の経営改善指導の際に車両別、取引先、配送ルート別の利益率を分析した上で、赤字幅が大きい取引先に対しては、運賃の値上げ交渉や取引中止を検討するよう助言してきた。協会によると、運送会社や商工団体では車両別の利益率は算出していても、取引先、ルート別の利益率は計算していないところが多いという。

 こうした経営支援の経験を踏まえ、作成する経営改善モデルには協会による利益率のデータ分析手法を導入。利益率を踏まえ、値上げ交渉や取引中止を検討する判断基準も運送会社の規模別にまとめる。限られた人的資源を利益率の高い取引先や配送ルートに集中するよう促し、残業時間削減を進める狙いがある。データ分析については、専門的知識がなくてもパソコンの表計算ソフトに数字を入力するだけで分析できるような仕組みを検討している。

 モデルの普及に向けては、10~12月に商工団体向けの研修会を開催する予定で、来年度からは各団体の経営指導に協会の中小企業診断士が同行し、合同で指導を行いながらモデルを活用した経営改善の取り組みを実践に移したい考えだ。

 4月に施行された残業上限規制では、トラック運転手の残業時間が月45時間までに制限された。ただ協会によると、従業員20人未満の小規模な運送会社では、規制の施行前まで残業が月100時間を超えるケースも多かったという。協会は「従業員の少ない運送会社は長距離輸送から撤退し、近距離、中距離で生きていくのも選択肢の一つだ。経営改善モデルを普及させれば運送会社がデータを活用して判断ができるようになり、長時間労働の是正に貢献できる」としている。


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