東京電力は22日、福島第1原発2号機で着手を予定していた溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出しについて、準備作業中に装置の取り付け順を誤る作業ミスが起きたため着手を断念した。次の作業着手時期は未定。3度の延期を経てようやく開始されるはずだった取り出し作業は、初歩的ミスで再びつまずいた形で、廃炉作業に向けた東電の信頼性が問われそうだ。
東電によると、デブリの試験的取り出しに向け、協力会社の作業員が同日午前7時25分ごろに取り出し装置を原子炉格納容器につながる貫通部に挿入する準備を開始した。貫通部の手前には、放射性物質を遮断する「隔離弁」があり、取り出し作業では約1・5メートルのパイプ5本を接続して装置を押し込み、隔離弁を通過させる手順となっていた。しかし、協力会社作業員が1本目のパイプを装置につなぐ準備中、接続するパイプの順番が誤っていることに気付き、午前8時55分ごろに作業を中断した。装置の先端は現在、隔離弁まで約40センチ手前の距離にある状態という。
このパイプには装置に電源を供給するケーブルを通す役割があり、2号機建屋内に装置が搬入された後の7月28日にはパイプ内にケーブルを通す準備を行っていた。東電によると、その時点でパイプの順番が本来と違っており、その後の各種点検でも誤りに気付けなかったという。
東電はミスの原因究明を図るとともに、再発防止に向けた作業手順の再確認など対策を講じる必要があるとし、次回の再開時期については見通しを示していない。同社の小早川智明社長は22日、新潟県内で記者団の取材に応じ、試験的取り出し作業に着手できなかったことについて「焦って進めるより、安全、着実に進めることが必要だ」と述べた。23日には第1原発を訪問し、原因を調査する考え。
廃炉の最難関とされるデブリ取り出しは当初、2021年に2号機で先行して試験的に行う計画だった。しかし海外からの取り出し装置到着の遅れや工法変更などで3度延期。今回の取り出しは、格納容器貫通部から最長22メートル伸びるパイプを差し込み、取り出し装置の先端に取り付けた爪形の器具で3グラム以下のデブリをつかんで回収する予定だった。デブリ到達と採取まで約1週間、回収までは約2週間を見込んでいた。