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【ふくしま乗り物語】県消防防災ヘリ「ふくしま」 頼れる空の安全部隊

08/26 08:15

訓練に飛び立つ県消防防災ヘリコプター「ふくしま」=8月4日、県消防防災航空センター(永山能久撮影) 【撮影情報】カメラ・ニコンD6、レンズ・ニコン80―400ミリ、絞り値・f/32、シャッター速度・1/80秒、ISO・200
飛行前点検をする操縦士(右)と副操縦士。点検項目は約30項目あり15分かけて行われる

 現場到着までにかかる時間は30分以内。玉川村の県消防防災航空センターに配備されている県消防防災ヘリコプター「ふくしま」は県内全域を網羅し、救助や救急搬送、災害対応など、さまざまな場面で県民の命を守っている。

 機体は2019年12月から使用されている「2代目」で、全長16・6メートル、最高時速306キロ。航続距離は約800キロと、初代と比べて100キロ以上向上し、自動で空中に停止できるオートホバリング機能を備える。

 ヘリの大きな利点は、地上から行きにくい場所にもいち早く到達できることだ。出動時に現場指揮に当たる副隊長の野地宏樹さん(47)は「ヘリは機動性が高く、地上部隊が活動困難な地点でも空から支援できる」と強調する。

 昨年1~12月の緊急運航回数は105件に上り、遭難者の捜索や救助、患者の搬送と幅広く活躍した。要請を受けて県外で活動することもあり、ことし4、5月には山形県で起きた山林火災の消火に当たった。

 飛び立つ際には機器やプロペラの状態など約30項目を15分ほどで確認し、全てが「異常なし」となって初めて飛行する。安全な航行には搭乗者の健康管理も大切で、心電図や視力などを調べる「航空身体検査」を半年に1度受ける。パイロットの赤羽忠さん(51)は「検査を意識して日頃から節制を心がけている」と語る。

 ヘリにはパイロットと航空隊員、整備士が搭乗しており、円滑な活動には意思疎通が重要だ。航行中には航空隊員が周囲に注意を払い、ハンドサインやジェスチャーを交えて状況を伝えることで激しいプロペラ音の中でも情報共有が可能になる。活動後は意見交換の場を設け、勤務歴や立場の壁を越えて反省点や改善すべき点を話し合う。

 行きと帰りには、出動する乗員と待機する人が窓越しに手を振り合う。「無事に帰る」との思いを込めた恒例行事。充実した性能の機体とそれを動かすプロの集団が空から福島の安全を支えている。(秋山敬祐)

   ◇

 消防防災ヘリコプター「ふくしま」 イタリアのレオナルド社製で型式はAW139。最大14席を確保でき、要救助者をつり上げる「ホイスト装置」や避難誘導などに使われる機外拡声器を備える。

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