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「皇室献上モモ」詐欺、有罪判決 計画的で悪質、福島地裁

09/06 08:00

 宮内庁関係者を名乗り、献上品名目で福島市や茨城県の農家からモモなどの農作物をだまし取ったなどとして、詐欺や偽造有印公文書行使などの罪に問われた東京都練馬区、農業園芸コンサルタントの男(76)の判決公判は5日、福島地裁で開かれ、男に懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)を言い渡した。弁護側は控訴するか検討する。

 島田裁判長は判決理由で、男は献上品を推薦や選定する権限がないのに長期間にわたり身分を偽って農作物をだまし取っており「周到に準備された計画的で悪質な犯行」と指摘。農家に示した献上依頼書は実在せず「公文書の社会的信用を害するもので結果は軽視できない」と断じた。一方、公判の最終段階で一部の罪を認めたことなどから執行猶予を付けた。

 判決によると、男は皇室への献上品選定や推薦する権限がないのに、2022年6月、福島市の70代男性農家に「宮内」の印影が押された献上依頼書を示し、同年8月にモモ4箱(1万6500円相当)をだまし取ったほか、茨城県の農家からも皇室献上や検査名目でシイタケ2キロ(6千円相当)やトマト2箱など(1万2千円相当)をだまし取るなどした。

 「宮内庁」偽装、解明されず

 男は詐欺罪について一貫して無罪を主張しており、動機や宮内庁関係者を名乗った経緯、「宮内庁に発送した」と主張する農作物の行方は明らかにならなかった。

 男は当初、宮内庁から譲り受けたとする献上依頼書も本物で、自分には献上品を推薦する権限があり、だますつもりはなかったと主張。しかし、公判が進むにつれて曖昧な受け答えが目立ち、最終的に献上依頼書の偽造を認めた。一方、詐欺罪については最後まで無罪を訴え、判決言い渡し前には「仕事の上でご迷惑をかけて申し訳ない」とあくまでもだまし取ったわけではない旨を強調した。

 今回の事件では、「モモ献上のお礼」として男が届けた木札を栽培の励みにしていた農家もおり、福島市はモモPR用のポスターに活用していた。自信を持って生産してきた農家や魅力発信に取り組む行政側にとっても、不明な点が多いままとなった。

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