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いわき豪雨の検証結果最終報告 避難所運営など改善提案

09/06 11:55

 昨年9月にいわき市で発生した記録的豪雨を受け、被害状況などを検証してきた東北大災害科学国際研究所を中心とするチームが5日、最終報告書を公表した。避難所運営や災害対策本部の対応、情報発信などの改善策を提言、検証チーム総括で研究所の柴山明寛准教授は「今回の改善案が全てではない。段階的に改善を進めてほしい」と求めた。

 提言のポイントは【表】の通り。避難所の環境改善については、プライバシー保護の観点で避難をためらう被災者もいるとし、避難者の有無にかかわらず仕切りを設けることを提案。学校施設が避難所の場合は、要配慮者への配慮や熱中症予防の観点から空調が完備された空き教室の積極的な利用も提言した。

 甚大な被害が発生した同市内郷地区では、所有者不明の橋に流木がかかり氾濫につながったことから、森林の適切な管理も要望。発災直後は、市職員が避難所の運営に関われない事例も想定されるため、自主防災組織や自治会主催の避難所運営訓練の実施も求めた。

 豪雨災害を受け、県は氾濫した新川、宮川の改修工事といったハード対策を進める方針。ただ、柴山氏は「気候変動が進み、ハード対策には限界がある」とも強調し「重要なことはソフト対策。住民にも周知することを望む」と語った。

 最終報告書の報告会は市役所で開かれ、柴山氏が内田広之市長に報告書を手渡した。内田市長は「逃げ遅れゼロ、災害死ゼロに向け手を尽くす」と語った。

 半数、緊急的に避難 内郷地区アンケート 

 最終報告会では、検証チームがいわき市内郷地区の住民を対象に行ったアンケートの結果も公表された。避難のきっかけに関する質問では、避難した世帯の約半数があらかじめ避難をした一方、半数近くの世帯は家の近くに水が来たり、住宅の1階に水が上がったりしたことを受けて緊急的に避難をした実態も浮かんだ。

 避難しなかったと回答した世帯には、その理由も聞き取った。「自宅には被害がないと思った」が約900世帯と最多で「今までは警報や注意報が出ていても災害が起きなかった」(約500世帯)との回答があった。また自家用車を高台などに避難させた後、住民の約4分の3は自宅に戻っていたという。

 アンケートは、罹災(りさい)証明の発行が行われた内郷地区の白水、内町、宮町、綴町に住む3099世帯を対象に4~5月に実施し、1726世帯から回答があった。今後、アンケートの詳細な分析を進め、住民説明会を開く予定。

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