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半谷静香「光輝く進化」 4度目挑戦、初のメダル パラ柔道

09/06 10:17

半谷静香
声援を送る母千賀子さん(前列右)と父良人さん(同右から2人目)=いわき市文化センター

 4度目の挑戦で初のメダルをつかみ取った。5位で表彰台に届かなかった東京大会から3年。パリ・パラリンピック柔道女子48キロ級(全盲)の半谷静香(36)=トヨタループス、いわき市出身=は、年齢を重ね、大けがや体の変化を感じながらも、たゆまぬ努力で輝くメダルにたどりついた。

 「東京からの3年間はつらかった。リハビリをしている時間が長く、自分と向き合う時間は厳しかった」。半谷は大会前に本音を語っていた。

 柔道人生を揺るがす大けがを負ったのが2022年6月。練習中に右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂し、初めての手術を決断した。大会には1年以上出場できず、我慢の日々を強いられた。

 生まれつきの網膜色素変性症の症状も年々進行していった。「『全盲なのに見えなくなるって何だよ』って思うかもしれないが、光を頼りにして歩く中、横断歩道の白線が見えにくくなったりするのも感じていった」。困難は尽きなかった。

 それでも、大好きな柔道では希望の光を見失わなかった。「けがをして動きが制限されると、新しい体の使い方に出合える。人生も楽しくなきゃ意味がない」。前向きに前進した。

 東京大会後、健常者の柔道の国際大会で活躍した磯崎祐子さんに指導を仰いだのも大きな力となった。「柔道のコーチは、体の使い方を『擬音』で説明する人が多い。ただ私は『言語化』にこだわっていて、それに磯崎コーチは付き合ってくれた。おかげで、どんどん強くなれた」と感謝する。

 半谷はこの3年間で自分の柔道が「新しい境地に入った」と感じている。前かがみになり、攻めたいだけだった柔道から、目に見えるように相手の体を感じ、柔軟性も持ち合わせた柔道へと進化させた。「今が一番柔道が楽しい。だからこそ、パリでは自分の力を出し切りたい」。そう語っていた36歳のベテランがパリの舞台で力を証明した。(佐藤智哉)

 地元「静香」コール

 半谷を応援しようと、いわき市は5日、市文化センターでパブリックビューイング(PV)を開いた。親族ら約60人が詰めかけ、「静香! 静香!」のコールを送った。

 最前列では父良人さん(69)と母千賀子さん(66)が応援した。良人さんは「障害に苦しんだ子どもの頃の日々が思い出される。(半谷は)努力家で周りに笑顔を与えられる人。今回もみんなを喜ばせてくれた」と笑顔があふれた。

 平一中の柔道部顧問として半谷を指導した松本好司(こうじ)さん(60)と坂本光弘さん(65)は「昔からこつこつ頑張る子で、これまでの努力が報われて良かった。いわきの後輩たちにとっても良い見本になる」と感慨深げに話した。


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