国際原子力機関(IAEA)が12日、東京電力福島第1原発事故後の除染で出た土壌などを巡り、再生利用や最終処分の客観的安全性について福島大で講義した。環境省などの主催で、オンラインを含め県内外の学生約80人が参加した。IAEAの最終報告書に基づく政府の理解醸成活動は初めて。
IAEAのアナ・クラーク廃棄物・環境安全課長らが講師を務め、10日に公表した最終報告書のポイントを説明。専門家チームが現地視察や意見交換などを重ねた結果、除去土壌の再生利用と最終処分の計画は「安全基準に合致している」と判断したことを伝えた。
一方、最終処分場の選定などを念頭に「検討すべき課題も多く存在する」と指摘。「皆さんが利害関係者であり続けることは間違いない」とした上で「安全性に関して本日得た知識を生かし、立地先を選定する局面で重要な役割を果たしてほしい」と呼びかけた。
学生からは「土壌を再生利用すると聞いた時の第一印象は」「(法制化された)2045年までの県外最終処分は実現可能か」など活発に質問が出ていた。
同省の昨年度全国認知度調査で、県外最終処分の政府方針を「知っている」と答えた県外在住者は24・6%にとどまる。政府はIAEAの報告書を土台とし、対話活動や現地見学などを通じて理解醸成を図る考え。