自転車走行中の携帯電話使用と酒気帯び運転に罰則を新設した改正道交法が11月1日に施行される。施行が目前に迫る中、その危険性を知るため、福島県警の協力を得て「ながら運転」と深酔い状態での運転を体験した。前方の歩行者役に気付かず、危うく衝突しそうになった。「これが実際の公道だったら」。恐怖を感じる結果となった。(報道部・高田泰地)
気付かぬうちに蛇行
「ながら運転」の体験では、スマートフォンでメッセージを入力しながら、自転車で3メートル間隔に設置された障害物の間をS字走行した。普通に運転すると1往復18秒95だったが、「ながら運転」時は24秒83と約6秒も遅くなった。走行している際は気付かなかったが、見ていた同僚記者に大きく蛇行運転していることを指摘された。「自分では危険性に気が付くことができない」。注意力がなくなり、思うように運転できなかった。
酒酔い運転体験は特殊なゴーグルを着用。加えて、「ながら運転」も同時に行った。視界が狭まり、周りの様子がよく分からない。走行していると、ほんの1メートル先に人がいるのに気付いた。「危ない」。慌てて逆方向にハンドルを切り、難を逃れた。訓練のためスピードを出していなかったため間に合ったが、実際の公道で、相手も気付いていなければ事故につながったかもしれない。
視界が狭まり注意力も散漫になれば、誰しもが事故を起こす可能性がある。重大事故にもつながりかねない。「自分は大丈夫」ではない。危険性を伝える必要性があると強く感じた。
飲酒運転防止、飲食店対応へ
自転車で「ながら運転」をした経験のある人からは、「十分に周りが見えている」「自分なら大丈夫」との声が聞こえる。県内では、交通関係者や酒類提供者が罰則開始に向けた対応のため準備を進めている。
「危険かどうか周囲が見えているつもりだった」。福島市の大学生の男性(20)は自転車でスマホを操作していた理由を語る。しかし最近、男性は歩行中に自転車とぶつかりそうになった。自転車の人物は携帯電話を操作しており、衝突直前で気付いて互いに避けた。男性は「自分で(ながら運転を)している時には感じていないだけだった。もうしない」と誓う。
福島市内で飲食店を経営する渡辺将俊さん(54)は、これまで客に乗用車などの使用は確認していたが、新たに自転車に乗ってきたかどうかも聞く方針だ。今回の改正で運転者に酒類を提供する側も違反対象になることから、「一層の確認が必要」と話す。
県警によると、県内の今年1月~9月末の自転車が関係する交通事故は214件(前年同期比7件増)で、けが人は212人(同5人増)、死者は3人(前年と同数)。事故の多くは自転車利用者側が何らかの交通違反をしているという。
県警は、交通教室などで罰則強化を周知し、取り締まりを強化する方針を打ち出す。県警交通企画課の深谷康宏調査官は「自転車のながら運転や飲酒運転は軽く考えられてきた。ルールをしっかり守ってほしい」と訴えている。