ペース配分を度外視し、気迫を前面に出した。熊本県立総合体育館で15日に行われたバドミントンの熊本マスターズ女子シングルスの準々決勝。今年限りでの現役引退を表明している会津若松市出身の大堀彩(28)=トナミ運輸、富岡高卒=は1時間超えの激闘も及ばなかった。「私らしく、力をセーブせずに突っ走った。飛ばし過ぎた部分もどこか自分らしい」と目を潤ませながらほほ笑んだ。
引退を意識したのはパリ五輪出場を確定させた時期にさかのぼる。「パリを最後にしてもいいくらいのプレーをしたいと思った」と大堀。パリ五輪8強入りの達成感を経て、そこからさらに4年後のロサンゼルス五輪に向けて歩めるか―。自問自答の果てにラケットを置く決意を固めた。
対戦相手の山口茜(再春館製薬所)は、小学生時代から競い続けた好敵手だ。「茜ちゃんの存在のおかげで踏ん張ってこられた」と大堀。現役最後の巡り合わせに「正直、一番の理想。(国内試合で)最後が茜ちゃんで良かった」。酸いも甘いも経験した両者は試合後、ネット越しに固い握手を交わした。
「私らしく―」。本大会で大堀が試合を終えるごとに口にした言葉だ。大会に懸ける思いだけでなく、自らを奮い立たせる覚悟の表れでもあった。「やり切ってすがすがしい気持ち。後悔は全くない」。ファンからの温かい拍手で見送られた28歳はそう言い切った。(小野原裕一)