日銀福島支店は22日発表した11月分の県金融経済概況で、県内景気の総括判断を「足踏みしている」とし、5カ月ぶりに下方修正した。物価高に伴う節約志向の強まりが個人消費を鈍化させ、賃上げによる好影響も限定的だという。
個人消費は、ドラッグストアの売り上げは堅調だが、百貨店やスーパー、コンビニなどは前年割れを続けている。物価高が続き、食料品や家庭用品などさまざまな品目で節約志向の強まりが表れている。コメの価格の高止まりも影響しているとみられる。
福島支店で記者会見した中嶋基晴支店長は「賃上げが消費を下支えすると想定していたが、実際は家庭によってばらつきがあり、収入の増加を必ずしも実感できていない家庭が少なくない。収入が増えたとしても、長引く物価高が財布のひもの固さを増しているのではないか」と分析した。
生産動向は、海外市場での競争環境が厳しさを増し、自動車関連などで弱めの動きがみられる。住宅投資では、価格が高止まりする中で住宅ローンの審査を通過できない顧客も増えているといった声もある。県内では4~9月のマンション着工が1件もなく、仮に年度末まで着工がなければ、震災のあった2011年度以来だという。
「人手不足には有益」
中嶋基晴支店長は22日の記者会見で、年収103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」を引き上げる政府の経済対策について問われ「人手不足対応という面で有益なところがある」との見解を示した。
中嶋氏は「現時点で一概には言えない」とした上で「働きたい意欲があるのに働き止めをしている現状が何とかならないのか、という県内企業の経営者がたくさんいる。そういう意味で、人手不足対応には有益なところもある」と述べた。