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【12月28日付社説】25年度政府予算案/歳出構造の見直し足りない

2024/12/28 08:10

 歳出が青天井で膨らみ続け、財源は国債依存から脱していない。これでは財政健全化が遠のくばかりで、将来に不安が募る。

 政府が2025年度の予算案を決めた。一般会計の歳出は115兆5415億円と、当初予算ベースで過去最大だった23年度の114兆3812億円を上回った。

 歳出総額が110兆円を超えるのは3年連続だ。防衛費や社会保障費などが膨らみ、国債の返済費と利払い費を合わせた国債費は28兆円を計上した。

 歳入では、税収を78兆4千億円と見積もり、6年連続で過去最高を更新した。それでも歳出を賄うことができず、新たに28兆円の国債を発行する。

 今年6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」では、コロナ禍で拡大させた歳出構造を「平時に戻す」としていた。この方針に相反した予算案であり、将来世代につけを回すのは無責任との批判を免れない。

 これまで借金に依存した財政運営を続けたことで、24年度末時点で国・地方の長期債務残高は1315兆円に上る。しかし日銀の金融政策の正常化などを背景に、金利は上昇傾向にある。国債の利払い費が財政を圧迫しないためにも、財政健全化の取り組みを急がなければならない。

 近年、年度途中に経済対策を名目に巨額の補正予算を編成することが常態化している。先日成立した14兆円近くの本年度補正予算では、緊急性の低い支出が含まれていることが指摘された。

 災害などで年度途中に大規模な補正予算の編成を余儀なくされる事態は起こり得る。歳出全体の半分以上を占める社会保障費や国債費で財政が硬直化するなか、緩んだ歳出構造を改めることが最も重要になる。与野党は予算のばらまきを競わず、国会で政策の中身を厳しく精査しなければならない。

 復興庁関連の歳出総額は4864億円を計上し、24年度当初予算を158億円上回った。東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域で、新たに避難指示解除の対象となる「特定帰還居住区域」の除染費用、福島国際研究教育機構(エフレイ)の事業費、風評対策の費用などが盛り込まれた。

 政府が実施した行政事業レビューで、外部有識者が見直しを指摘した福島再生加速化交付金は24年度当初予算と同規模の599億円となった。復興途上にある被災地の実情を踏まえた対応とはいえ、無駄な歳出は許されない。国、自治体は、事業効果を最大限に引き出す取り組みが必要だ。

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