混迷から抜け出す糸口を果たして見つけることができたのだろうか。そう疑問を感じざるを得ない1年が暮れようとしている。
ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとイスラム組織ハマスなどとの戦闘はいずれも収束の見通しが立っていない。
その背景には、停戦などに向けて主導的な役割を果たすべき国連がその役割を果たせていないことがある。トランプ氏が再び大統領に選ばれた米国をはじめ、各国で政権交代が目立っており、国内の課題や政情安定に注力せざるを得ない状況も一因だろう。
東アジアでも中国の台湾に対する威圧をはじめ、紛争の火種があるなかで、韓国の政情が揺れている。各国の動向が影響を及ぼし合う国際社会では、一国のみでの安定はあり得ない。自国に加え、他国と協調して国際秩序の維持に取り組むことが不可欠だ。
国内では、政界の自浄能力の低さが目立った。自民党の政治資金パーティーを巡る裏金問題では、保身や衆院選に向けた思惑が絡み、個人の責任を問うことに終始した感が否めない。衆院選の大敗はその結果だ。勢力が均衡する与野党が、自ら襟を正していくことができるのかを注視したい。
経済を巡っては、日銀が大規模な金融緩和策の柱だったマイナス金利政策の解除に踏み切った。株価は順調に推移したものの、賃上げは地方にまで浸透しているとは言えず、トランプ次期米大統領の通商政策など、日本経済への影響が読み切れない要素も多い。政府と日銀には、金利や為替操作などを通じ、経済成長の動きを強固にしていけるかが問われる。
元日に発生した能登半島地震の被害は甚大だった。マンパワーに欠け、復旧・復興が順調とは言い難い。人口減少と過疎化を見据えた災害対応の在り方を考える契機としなければならない。
東京電力福島第1原発の廃炉を巡っては、原子炉建屋に残る溶け落ちた核燃料の取り出しに初めて成功した。大きな前進ではあるものの、今後の取り出しにどれほどの時間がかかるかは見通せない状況が続く。復興事業への国費負担についても見直しの必要性を指摘する声が出るなど、被災地を取り巻く環境は変化が見られる。
必ずしも明るいとは言えない状況のなかでも復興は着実に進めていかなければならない。その責任は被災地側ではなく、原発政策を推し進めてきた国にある。そのことを訴えつつ、復興後の姿をより明確にし、その実現を強く促していくことが大切だ。