国は、再生可能エネルギーを将来の主力電源とするため、技術革新や普及拡大に力を注ぐべきだ。
経済産業省は、国のエネルギー政策の指針となる次期エネルギー基本計画案をまとめた。2040年度の電源構成の目標は再エネが4~5割、火力発電3~4割、原発2割とした。脱炭素や増加が見込まれる電力需要などに対応するため、バランスが重視された。
再エネの目標値は23年度実績の2倍となる。実現に向け、本県などで実証が行われる次世代太陽光発電設備や洋上風力発電などの普及を図る。ただ既に欧州では発電量の半分を再エネが占める。
計画案通りなら、現在の欧州の水準に日本が到達するのは15年後だ。再エネの普及拡大が遅れていることへの危機感が足りないと言わざるを得ない。
再エネのさらなる普及で課題となるのは発電コストだ。経産省の試算によると、天候などによって発電量が変わる再エネの導入が進むと、火力の出力抑制など需給調整の追加コストが発生する。
一方、単純な発電コストだけみれば事業用太陽光は原発や液化天然ガス火力に比べ最も安い。再エネを安く安定供給する仕組みの確立に向け、国は蓄電池の導入拡大などを進めることが重要だ。
原発については、東京電力福島第1原発の事故後に明記されてきた「可能な限り原発依存度を低減する」との表現を削除し、再稼働や新増設で最大限活用する方針が示された。新増設に必要な巨額の経費を賄うため、方針を明示して投資を呼び込む狙いがある。
新増設の対象は、地域の産業や雇用の維持などに寄与し、地域の理解が得られるものに限るとしている。使用済み核燃料の搬出先である青森県六ケ所村の再処理工場の状況などを踏まえながら、具体化の検討が進められる。
しかし再処理工場の完成は延期が繰り返され、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設見通しも立っていない。廃棄物処理の問題に進展がないまま原発活用を推進していくことには疑問が残る。
能登半島地震では、石川県の北陸電力志賀原発の外部電源の一部が使えなくなり、避難道路が寸断された。東電が再稼働を目指す新潟県の柏崎刈羽原発ではテロ対策の不備が相次ぐなど、安全性への懸念は払拭されていない。
原発事故が起きれば事業者だけで対応できないことは福島第1原発をみれば明らかだ。原発を最大限活用するのであれば、有事の際にどう国が責任を取るのか、明確にする必要がある。